研究実績の概要 |
「燃え尽き」という邦訳が示すようにバーンアウトは「がんばりすぎ (仕事に対して情熱を持った結果)」というプロセスを含んだ概念である。しかし、申請者らが過去に行った研究では、現在世界的に使用されているバーンアウト尺度 (MBI, Maslach Bunrout Inventory) では、「がんばりすぎ」というプロセスに関係ないストレス反応までが高バーンアウトとして検出されることが示唆されている。本研究では、行動実験を中心とした一連の研究により、典型的バーンアウトを抽出し、そのメカニズムを検討することを目的としている。平成27年は学生を対象としてバーンアウト状態を実験的に再現することを目的とした。 実験参加者は対人援助職としてのロールを割り当てられ、クライアントと仮想的な手紙のやり取りを行い、その間の精神的消耗度の変化をVAS (Visual Analog Scale) を用いて測定された。実験参加者の情熱の指標として労力指標、時間指標、主観指標を用い、報酬をランダムにフィードバックすることで、情熱と報酬が精神的消耗度に与える影響についての検討を行った。一度のセッションで質問紙調査の結果を追認した予備実験では、質問紙調査と同様に情熱の強度は精神的消耗度の要因とはならないことが明らかとなった。2度のセッションで情熱の変化を検討した本実験ではセッション間で精神的消耗度が蓄積し、1度目のセッションで報酬が得られなければ、精神的消耗度は減少し、情熱の強度が維持されないことが明らかとなった。一方、個人の特性として理想・使命感が高ければ報酬が得られなくても情熱が持続した。これらの結果から, 典型的バーンアウトとは, 報酬が得られない状況であっても、理想・使命感によって行動を繰り返し, 結果として精神的消耗が蓄積した状態であることが示唆された。
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