本研究では集団の秩序維持に貢献するものとして理解されている非協力者への罰について,共同体成員が自らの手で非協力者に制裁を与える個人罰と第三者の手による制度罰それぞれの有効性を評判との関係の観点から検証した。一連の研究から以下が示唆された。1)過去の評判情報を参照可能な状況のもとでは個人罰が安定して制度罰は安定しない一方,過去の情報を参照不可能な状況では個人罰は安定しない。2)他者の過去の行動の情報が不明確な状況のもとでは個人罰よりも集団のリーダーの手による罰が機能する。3)個人罰が評判の利益を獲得する背後には個人罰行使者を選択する者の社会的選好よりも自己利益の最大化動機が関わっている。
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