研究課題/領域番号 |
15K17265
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研究機関 | 白鴎大学 |
研究代表者 |
浅田 晃佑 白鴎大学, 教育学部, 准教授 (90711705)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 社会性 / 身体性 / ボディイメージ |
研究実績の概要 |
本年度の成果は、主に2点である。1点目は、自閉スペクトラム症者のボディイメージに関する研究結果である。この研究結果は、国際学術誌に論文として出版できた。これまで、自閉スペクトラム症者の困難さは、主に人とのコミュニケーションなどに関する社会性の領域でのみ研究されており、他者が関与しない個人に内在する身体性の問題にはほとんどアプローチされてこなかった。本論文では、身体性の一分野であるボディイメージについて自閉スペクトラム症者と定型発達者を比較した。その結果、自閉スペクトラム症者は、定型発達者よりも、自身の身体幅の推定が正確でないということが明らかになった。本研究は、自閉スペクトラム症を考える際に、社会性だけでなく身体性にも目を向ける重要性を示した。2点目は、自閉スペクトラム症児の会話のルール違反に対する違和感の感じ方についての研究である。この研究は、本計画の中で、社会性と発達的観点の側面の研究を補強する目的で行った。結果は、定型発達児が自閉スペクトラム症児よりも正答率が高かった先行研究とは異なり、それより高い年齢で行った今回の研究の場合、両グループの結果に差は見られず、自閉スペクトラム症児が年齢の増加に伴い会話のルール理解の能力を発達させた可能性を示唆した。本研究は、年齢ごとに異なって現れる可能性のある自閉スペクトラム症児の困難さに目を向ける重要性を示した。以上の知見を統合して、自閉スペクトラム症において、社会性と身体性の関係性について更なる考察が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している理由として、ボディイメージの論文が国際学術誌に掲載されたことが挙げられる。この学術誌(Journal of Autism and Developmental Disorders)は発達障害や自閉スペクトラム症に関して伝統のある学術誌で、掲載率も低いことから、本論文が当該分野において一定の水準の質を満たしていることが示される。他の理由として、本計画内で、これまで行えなかった領域にも新たに行った研究によりアプローチできており、その研究において学会発表が完了し、研究成果に結びついている点が挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、本年度は最終年度であること、そして、学会発表に結びついた研究結果があることから、それらの研究結果を論文として発表することに注力することが挙げられる。また、本計画内で既に出版された論文もあり、新たな結果も含めて、自閉スペクトラム症の社会性と身体性の関係についての統合した見解を示し、まとめたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、研究成果は論文出版が達成されるなど進展が見られたものの、所属機関を変更したため達成できなった計画があったためである。使用計画は、主に、既に学会発表で成果発表されている研究結果の論文化のための費用(英文校閲費など)に充てる予定である。
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