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2015 年度 実施状況報告書

大学教育における問題発見力を育むための文脈構成力強化型教授法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 15K17274
研究機関九州大学

研究代表者

向井 隆久  九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 助教 (30622237)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード問題発見 / 課題発見 / 問い生成 / 文脈構成 / 高等教育 / 認知プロセス
研究実績の概要

27年度の主要な研究目的は,本研究で提唱している問いー文脈相互構成プロセスの考えに基づき,逆算的な文脈構成力(問いを見出すために,講義内容のどこに注目し,どのように考えを展開(文脈構成)すればよいかを,大まかな問いのイメージから逆算的に考える力)と問い生成力(問題発見力)との因果的関係を実証的に検証することであった。具体的には,大学生89名(介入群:41名,統制群:48名)を対象とし,逆算的な文脈構成力を高めることが,問いの生成力を向上させる可能性を検証した。文脈構成力を高める手法としては,Web学習システムを用いた授業外トレーニング課題を作成した。介入群は授業内で逆算的な文脈構成作業を実施するだけでなく,授業外トレーニングを実施し(2週間で4~5問×5セット),統制群は授業内での逆算的な文脈構成作業のみを行った。
問い生成力の評価は,これまでの研究に基づき,再帰性・説明性・具体性の観点から深い問いの生成率を算出した。全講義を前期(2テーマ),中期(3テーマ),後期(2テーマ)にわけ,それぞれの期間ごとに介入群と統制群の深い問いの生成率を比較した。その結果,前期では両群の問い生成率に差はなかったが,中期・後期において介入群の方が有意に問題発見率が高いことが示された(前期:p<.05、後期:p<.01)。以上の結果から,逆算的な文脈構成力を育成する介入が問題発見力を高めることが明らかになり,両者の間の因果関係が示唆された。
さらに27年度は,「日常生活における問い」のデータ収集・分析を徐々に進めている。また3つ目の研究目的である「展望的な文脈構成力と問い生成力との関係の検証」についても,展望的な文脈構成力の育成課題をWeb学習システム上に作成完了し,調査を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

これまでの研究の継続であったこともあり,最初の目的であった逆算的文脈構成力と問い生成力との因果関係の検証が,比較的スムーズに進んだことと,因果関係を示唆する結果が得られたことにより,計画を変更せずに次の計画遂行に移ることができた。また展望的文脈構成を育成するWeb学習システム課題の作成も,逆算的文脈構成力の育成課題の作成経験を活かすことができたため,当初の予定より少ない時間で完遂することができた。
ただし,日常生活における問いのデータ収集と分析には,インタビューが重要になることが分かってきたため,今後の作業には予定よりも時間を要する可能性がある。また展望的文脈構成の評価スキーマを変更・新たに考案する必要性も見えてきたので,それらの作業に要する時間も考慮して,今後の研究を進めていく必要がある。

今後の研究の推進方策

今後の主要な目的は,1.「日常生活における問いの分析」と2.「展望的な文脈構成力と問い生成力との関係の検証」である。1については,大学の授業における問題発見(問い生成)の意味や特徴,困難さの原因を検討するために,「学生が普段,日常生活の中で生成する問い」を比較対象として分析する。つまり,学生が日常生活の中で慣れ親しんでいる問いの形式・特徴を分析し,大学の講義を受けて生成する問いと,どういった側面が異なるのかを比較検討することで,なぜ大学の授業における問い生成が難しいのかを明らかにする。現在は10名程度のデータがす収集されているが,日常生活で生成される問いの形式が見えつつあるので,サンプス数を増やしながら,さらに分析を推し進める。その際,調査協力者へのインタビューによって,日常生活ではどういった場面で問いが生成されやすいのか,本人が状況・文脈をどのように捉えているのかなどについてもデータを収集し,質的分析を行っていく予定である。
2については,作成した展望的文脈構成力の育成課題を実施し,基本的にはこれまで実施した「逆算的文脈構成力と問い生成力との因果関係の検証」と同様の手続きを遂行する。分析に際しては,改めて展望的文脈構成力の評価基準を作成する必要があるため,まずは予備分析として,学生によって生成された展望的文脈構成の内容を質的に分析することから始める。質的分析の結果に基づいて,評価基準を作成し,その基準に基づいて複数の評価者による展望的文脈構成力の評価を行い,展望的文脈構成力と問い生成力との因果関係の検証を行う。

次年度使用額が生じた理由

今年度、学生が日常生活において生成する問いのデータ収集及び分析を進める予定であり、これは質的分析を多用し、膨大なデータ処理を要する可能性があっため、テキストマイニングソフト(30万円相当)を購入する予定であった。しかし日常生活での問いのデータを収集して行く中で、協力者へのインタビューが重要であり、データ収集にさらに時間をかける必要があることが見えてきた。
また逆算的文脈構成力と問い生成力との因果関係の検証手続きが当初の予定よりもスムーズに進んだため、そちらの分析作業を優先的に行ったこともあり、テキストマイニングソフトの購入と、質的分析にかかる人件費代金を次年度に繰り越すこととなった。

次年度使用額の使用計画

次年度は、日常生活において生成する問いのデータ収集及び分析を本格的に進めて行く予定である。インタビューデータの収集も含めるため、当初の予定よりもデータ収集・分析に時間がかかることが予想されるが、その分、得られるデータは豊かになることが考えられる。それらのデータにより幅広く深い質的分析を実施するために、専門的なテキストマイニングソフトを購入するとともに、質的分析に係るデータ入力・整理、分析補助などの人件費に充てる予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 大学生における問題発見力の向上を目指した介入授業の効果ー文脈構成力の育成による効果の検討ー2015

    • 著者名/発表者名
      向井隆久
    • 学会等名
      日本教育心理学会第57回総会
    • 発表場所
      朱鷺メッセ:新潟コンベンションセンター(新潟県新潟市)
    • 年月日
      2015-08-28 – 2015-08-28

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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