平成29年度は、本研究の中核となる研究、すなわち授業外学修時間と主体的な学修態度が学修成果に及ぼす複合的な影響を縦断的に検討することであった。これまで、平成27年度には、VALUE RUBLICを参考にした高次認知能力を測定する尺度を開発し(Essential Learning Outcome Scale: ELOS)、平成28年度には、オンライン調査(Time 1)に基づき(大学生800名)、ELOSの信頼性及び妥当性の検討を行った。そして、授業外学修時間、主体的な学修態度が成績(GPA)、ELOS得点に及ぼす影響を階層的重回帰分析によって検討したところ、授業外学修時間の成績、ELOSに対する影響は統計的に有意ではなかったが、主体的な学修態度がそれぞれに正の影響を及ぼしていることが確認された。平成29年度には、平成28年度に実施した調査対象者に縦断調査を実施し(Time 2)、Time 1の授業外学修時間、主体的な学修態度がTime 2の成績、ELOS得点に及ぼす影響を検討した結果、Time1の横断調査の結果と同様に、授業外学修時間の成績、ELOSに対する影響は統計的に有意ではなかったが、それらに対する主体的な学修態度の影響は統計的に有意であった(正の影響)。これらの結果は、大学生が学修成果を達成する上で、授業外学修時間ではなく、主体的な学修態度が重要な予測因子となる可能性を示唆している。従来の研究は授業外学修時間に着目し、それを増加させるための方策を提言することが多かったが、それに対して本研究の成果は、単に授業外学修時間を延ばすのではなく、学修態度が重要であることを改めて提示するものである。ここで得られた成果は大学生の主体的な学修態度を教育によって効果的に高めるように3つのポリシーを改革していく上で、また教員個人の授業改善を進めていく上で極めて有意義な知見である。
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