近年、保育・教育場面において情動面に問題を抱える子どもの理解と支援が課題の1つになっている。例えば、幼児を対象とした調査では、「いやなことをされても気持ちを抑えて『やめて』と言える」という項目において、典型発達児に比べて「気になる」子どもの発達の遅れが顕著であることが示されている。このような情動面に問題を抱える子どもを理解し、支援していく上で、幼児期・児童期における情動表出の発達的変化およびその発達のメカニズムの解明が求められている。 2017年度は、仮想場面を用いた怒りの主張的表出について、言語的主張をしない場面における表情表出と言語的主張をする場面における表情表出の個人内差が年齢群によってどのように異なるかを検討した。その結果、年中児・年長児よりも小学1年生のほうが個人内差が有意に大きく、(1)小学1年生は言語的主張をしない場面と言語的主張をする場面とで異なる表情表出をすること、(2)小学1年生は言語的主張をする場面よりも言語的主張をしない場面のほうが表情で怒りをより強く表出することが明らかになった。 また、保育者を対象とした質問紙調査を実施し、幼児(年中児・年長児)の情動発達の特徴を検討した。その結果、(1)年中児よりも年長児のほうが、誇り・恥、共感、理解をより示すこと、(2)情動を表情で表現しない子どものほうが、自分の情動をより抑制すること、(3)他児の情動を理解している子どものほうが、自分の情動をより抑制することが明らかになった。 さらに、18th European Conference on Developmental Psychologyに参加し、幼児期・児童期の情動発達に関する情報収集を行った。
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