研究課題/領域番号 |
15K17281
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
荘島 幸子 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 講師 (70572676)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 性同一性障害 / 性別違和 / 教育現場 / コミュニケーション / 支援 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、小学校・中学校・高等学校における性同一性障害者/性別違和の児童・生徒(当事者)への支援の方法について、1.当事者-教員の間、2.当事者-保護者-教員の間、3.当事者-他生徒の間の3つのコミュニケーションの側面から検討を行い、現場で有用な支援モデルの構築を試みることであった。初年度は、性同一性障害/性別違和を抱える児童・生徒を取り巻く学校環境の実態把握調査(その後の調査の土台となる)を行う前の事前ヒアリングにより、研究のフィージビリティを確認することが重要な作業であった。 いくつかの政令都市にある教育委員会および自治体に本研究の趣旨を説明し、実態把握調査を行った場合にどれだけの情報を入手できる可能性があるかを直接担当者にヒアリングを行うか、あるいは電話で確認を行った。研究の事前段階では教育委員会および自治体にアンケート調査を行うことで性同一性障害/性別違和を抱える児童生徒の状況に関する情報を入手できると見込んでいたが、担当者へのヒアリングの結果、実際には教育委員会、自治体レベルでは各学校の生徒の情報をほとんど持ち合わせていないことが明らかとなった。このことはつまり、各学校で発生している事例(困難事例を含む)の多くは各学校のなかで対応されているということであり、教育委員会といった上部組織が率先して事例に介入することはほぼ皆無である(困難である)ことを示している。自治体によって状況が異なる可能性もあるが、主要都市、政令都市レベルの自治体の現状を踏まえて、調査方法を変更すべきであることが確認された。とはいえ、このような現状そのものこそが支援の問題を浮き彫りにしており、重要な結果であるといえよう。またこの結果を受け、全国の教育委員会に向けたアンケート調査は困難となったが、各学校レベルで調査を行うべきか、その際のデータの偏りなど、慎重に調査方法を見極める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画段階で予定していた調査方法を見直す必要はあるが、初年度において研究のフィージビリティを一定程度確認できたことは評価できる。またヒアリングを通じて研究のネットワークが拡大するだけでなく、教育委員会に対する性同一性障害/性別違和性との支援の重要性を伝えることもできた点は成果といえる。さらに、教育現場への支援を行っている成人の性同一性障害当事者へのインタビュー調査を開始し、未成年への調査に関する具体的な助言を得るなど、調査はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、本研究では、性同一性障害/性別違和を抱える児童・生徒を取り巻く学校環境の実態把握調査における調査方法の変更が求められる。現段階では、具体的な事例を入手する方法として、各学校レベルで調査を行うことを視野に入れているが、その方法では当初予定していた大量のデータを入手することはできない。また、各学校レベルの調査を採用する場合、学校の校長の判断によって調査可能かどうかが決定するために、1校1校確認するコストがかかるうえ、校長の判断によって調査が行えない場合も出てくる。その結果、支援に前向きな学校のデータは入手できるが、そうでない場合のデータは入手できないといったデータの偏りが発生することになる。データの偏りをなるべく減らすための対策や工夫をさらに検討する必要が依然残っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査計画の見直しを迫られたことにより、次年度使用額が生じた。また、平成28年4月30日に出産予定であり、平成28年3月20日から平成29年3月31日まで産前産後および育児休業による研究の中断が生じる予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
産前産後および育児休業による研究中断を補う期間として、2年間の研究延長を行うが、内1年間については実態調査把握の見直しを検討を行う作業として平成27年度残額分185497円を使用する予定である(平成29年10月~平成30年3月まで)。具体的には方法に関するレビュー調査、ヒアリング調査である。
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