研究課題/領域番号 |
15K17281
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
荘島 幸子 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 講師 (70572676)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | セクシュアリティ / ナラティヴ / 概念形成 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、小学校・中学校・高等学校における性同一性障害者/性別違和の児童・生徒(当事者)への支援の方法について、①当事者-教員の間、②当 事者-保護者-教員の間、③当事者-他生徒の間の3つのコミュニケーションの側面から検討を行い、現場で有用な支援モデルの構築を試みることである。 今年度は特に③当事者-他生徒の間のコミュニケーションの側面を明らかにすべく、さらに協力者を増やして研究を進めた。セクシュアリティをめぐる情報の取り入れと友好的態度形成に関する発達的プロセスの解明を目的とし、性的多様性や性的少数者に対する許容度が比較的高い大学生を対象にして、半構造化インタビューを行った(19名)。友好的態度形成に関わる仲間との体験(教える-教わる、巻き込む-巻き込まれる)や文化的装置(深夜帯のアニメ、BL)は、“LGBT”や“性的少数者”といった概念形成の発達と関与していたが、発達初期には独立したカテゴリとして存在していた。性的多様性やセクシュアリティの理解は概念形成から始まるのではなく、輪郭のない素朴な体験や子どもたち同士で閉じた「知識」として取り入れられた後、自らの体験を重ね合わせたり、他の概念(例えば、障害)と結びつき、理解が深まっていく様相が見られた。 中学校から高校にかけては、アイデンティティを確立する中で、性的マイノリティ者としてのアイデンティティを実践するなどLGBTと親和性の高い者がいれば、侵入的な経験によりLGBTに対して拒否的態度をとる者もいた。このことから、児童期から友人同士の閉じた関係のなかで性をめぐる情報を取り入れ始める子供たちへの適切な知識を付与すべきであること、性的マイノリティ者からのふいに侵入される経験へのサポートが必要であるといえる。これらは大人が日常語りにくい性をめぐって子どもとコミュニケーションすることの必要性を浮き彫りになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当事者へのインタビュー調査のほか、昨年度に新たに追加した「大学生の性の多様性を認める態度の発達に関する調査」について、3月までに調査数を増やしてインタビューを実施し、詳細な分析が可能となる人数が集められている。今後は、データの詳細な分析を行い、国内外での学会発表を行う予定である(が、現在、新型コロナウイルス感染症の影響で予定していた国際学会は来年度に延期となった。国内の学会はオンラインで実施される予定)。 また、調査と並行して学校教員や自治体での講演も積極的に行い、現場に還元ができている。 以上から研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は今年度が最終年度である。これまで得られたデータの整理と分析を行うことを中心としつつ、論文や学会発表を通して社会に還元していきたい。またすでに、インタビュー調査のリクルートを終え調査を控えている当事者の方がいらっしゃるので、できればデータ数を増やしたいと考えているが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、現時点での実施可能性は低いと言わざるを得ない。 また、当初発表を予定していた国際学会も新型コロナウイルス感染症により来年度に延期となっている。セクシュアリティの理解の仕方には文化差があるため、海外の研究者とディスカッションを行うことは本研究課題遂行において重要であると考える。来年度の発表に向けてより分析を精緻化していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.旅費にかかる費用が当初予定した支出よりも安価で済んだため。 2.人件費、謝金は、科研費から支出せず、個人で支払いを行ったため(インタビュー協力者への謝金)。
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