研究課題/領域番号 |
15K17281
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
荘島 幸子 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 講師 (70572676)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | セクシュアリティ / ナラティヴ / ジェンダーワーク / コミュニケーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、小学校・中学校・高等学校における性同一性障害者/性別違和の児童・生徒(当事者)への支援の方法について、①当事者-教員の間、②当事者-保護者-教員の間、③当事者-他生徒の間の3つのコミュニケーションの側面から検討を行い、現場で有用な支援モデルの構築を試みることである。 2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、予定していたインタビュー調査を遂行できなかったため、インタビューデータの再分析(成果1)を行い、今後の研究の足掛かりを得ることに専念した。また、オンライン上でのインタビュー実施の可能性について検討した。縦断研究にご協力いただいている協力者とはコロナ禍においてもコンタクトをとり、次のインタビューに向けた準備を進めている。
成果1の概要:インタビューデータの再分析:ジェンダーワークとしてのよそおい ヒトのよそおい行動にはジェンダーが深く染み込まれている。<男><女>らしさを演出し、ジェンダーをまとう実践をジェンダーワークと捉え、他者とのコミュニケーションの1つとして捉えなおした。出生時に指定されたジェンダーを隠し、望みの性別で生きる人々のジェンダーワークを検討した結果、第1に、身体も含めた自己のトータルコーディネートであり、他者との相互作用の中で現れる社会的行動-地ならし、揺らぎ、分化する-であった。第2に、ある<ジェンダー>をもつ自己を確認、形成する側面を持ち、一生を通じて再編集を繰り返す実践であることが明らかになった。また、彼らの実践が生まれの性別のまま生きる者の実践にも通じていることを確認した。ジェンダーワークとしてのよそおいは、ジェンダーにまつわる抑圧や抵抗といった力が働く磁場において実践され、翻って<男><女>の境界線を定めたり、定めなおしており、よそおいは自己に密接に結び付くだけでなく、よそおう身体とその実践を通じて社会にも一石を投じている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響が長引き、インタビュー調査を実施することができなかったため。また、発表を予定していた国際学会は延期となった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は2021年度が最終年度である。教育関係者向けの講演が決定しており、現場への還元だけでなく、さらなる調査へとつなげる予定である。新型コロナウイルス感染症の影響が長引いており、対面でのインタビューは遂行できない可能性もある。オンラインでのインタビューによるデータへの影響を考慮する必要があるため、できるかぎり対面での実施を予定している。またこれまで得られたデータの分析は継続し、より有用なモデル構築を目指す。特に当事者-他生徒のコミュニケーションにおける「寛容性」に関しては、語り手によって理解のための様々な線引きが行われていることが明らかになりつつある。文化差、世代差、経験の差など、さらなる検討を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会の延期および国内学会のオンライン開催により、旅費が発生しなかったため。また、インタビュー調査が遂行できず、協力者への謝金が発生しなかったため。2021年5月時点においては国際学会がヨーロッパで開催される予定となっているため、2020年度に旅費として計上していた分を流用する計画である。
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備考 |
荘島幸子(2020)過酷な“通過儀礼”としての就職活動 -ジェンダー、セクシュアリティの視点から. 日本キャリア教育学会ニューズレター第117号, 4-6 ジェンダーから見たキャリア教育 1 性的マイノリティ http://jssce.wdc-jp.com/wp-content/uploads/2020autumn.pdf
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