研究実績の概要 |
1歳齢児は指さしを産出すると,その直後に養育者から向けられる言語的説明を顕著に学習する。これを可能にしている心理的メカニズムを明らかにするために,本申請課題では,1歳齢児の指さし直後における1歳齢児と養育者の心的状態を眼球運動から直接解明することを目的とした。昨年度は,指さしを産出する際の1歳齢児の眼球運動をアイトラッカーで計測することが困難であったことが判明した。この理由の1つは,1歳齢児が指さしを産出する際に大きく移動してしまい,モニターの前において静止しないことにあった。1歳齢児の眼球運動を計測するためには,アイトラッカーの取り付けられたモニターのまえに一定時間,静止する必要がある。残念ながら,本年度においても,指さし産出時における1歳齢児の眼球運動をアイトラッカーによって記録することはできなかった。一方,昨年度,静止した状態で1歳齢児から指さしをサンプリングするための手法として,1歳齢児の指さし産出後,即座に母親が指さしを産出するという方法を考案した。この結果について,さらに分析を重ねた結果,査読論文としてCognitive Development誌に掲載されるに至った(Kishimoto, 2017)。この成果により,アイトラッカーの取り付けられたモニター前で静止した1歳齢児から,指さしをサンプリングする手法が確立されたと考えられる。今後,この手法を応用し,指さし産出時の1歳齢児の眼球運動をアイトラッカーによって検出できるものと思われる。
|