研究課題/領域番号 |
15K17283
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
溝川 藍 明治学院大学, 心理学部, 助教 (50633492)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 心の理論 / ほめ / 自他理解 / 幼児 |
研究実績の概要 |
他者から受ける評価(肯定的評価・否定的評価)は,必ずしも自己評価とは一致しない。自己評価とは異なる他者評価を受けた際の子どもの内的体験や反応は,他者との関係性や心的状態の理解を基盤に形作られるものであり,「自他の心の理解」の発達の一つの指標として考えることができる。本研究では,自己の活動に対する自己評価と他者評価の間にズレが生じている場面に着目し,幼児・児童が,その活動や評価のズレをどのように捉え,次の行動につなげていくのかについて,認知的・社会的発達との関連から検討する。 平成27年度は,失敗場面での教師からの肯定的評価(ほめ)に対する幼児の反応(感情反応,自己評価,再挑戦の意欲)の個人差について検討した。61名の幼児(年中児・年長児,平均年齢5.78歳)を対象に,新規に作成した「失敗・ほめ課題」と,心の理論課題,絵画語彙発達検査(PVT-R)を実施した。その結果,幼児期の子どもは,失敗場面で教師から肯定的評価を受けた際に,ポジティブな感情反応を示し,自己評価も高まることが明らかになった。さらに,失敗場面での教師からの肯定的評価に対する反応と心の理解の間に関連があることが示された。具体的には,心の理論課題の得点が高い幼児ほど,失敗場面で教師から肯定的評価を受けた際に,驚き感情が少なく,自己評価が低かった。これらの知見から,保育・教育場面において子どもの活動に対してフィードバックを与える際に,子ども一人ひとりの心の理論の発達段階を考慮する必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
保育所の協力を得て,予定通り調査を実施した。研究成果は論文にまとめ,英文学術誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は児童を対象に質問紙を用いた集団調査を行い,失敗場面での教師からの肯定的評価に対する反応(感情反応,自己評価,再挑戦の意欲)が児童期を通じてどのように変化するかを検討するとともに,これらの反応と認知発達の関連を明らかにする予定である。また,平成29年度には,保育者・教師を対象に,子どもの発達特性に応じた「ほめ」の実態に関するアンケート調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年4月の異動に伴い,当該研究に必要な書籍・消耗品の一部を4月以降に購入することとした。また,論文の英文校閲を平成28年3月に依頼したため,次年度予算からの支出となった。
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次年度使用額の使用計画 |
書籍・消耗品の購入費,英文校閲費として使用する。
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