研究課題
本研究は視覚教材において物体を呈示する際の,認知処理に最適な枠線に対する対象物の大きさについて検討するものである。ある枠線に対して,物体を認知処理する際,物体ごとに最適な大きさの比率があり,さらにこの比率は物体の実世界における見えの大きさに比例することが,先行研究で示唆されている。この認知処理特性を視覚教材作成原則において考慮するための基礎的検討として,2016年度は以下の研究活動を実施した。まず,前年度実施した郵送調査で得られた描画について,開発したプログラムを用いて詳細な分析を行った。その結果,児童期から青年期にかけて,描画の大きさに顕著な違いが観察されず,枠線に対して物体を描画する際,児童期で成人とは異なる面積比率で描画する傾向は見出されなかった。しかしながら,物体の実世界での大きさと年齢の効果に交互作用があり,極めて大きな物体は,6歳児において顕著に大きく描写することが観察された。このことから,発達にしたがって,実世界での大きさとの対応関係の傾きが緩やかになることが示唆され,今後視覚的表象や認知処理特性の発達との関連を議論する必要性が指摘された。また,大きさの評定実験に適切な無意味物体の作成に関する理論的検討を進め,先行研究で使用されているいくつかの候補を選定した。関連する研究も含め,成果の一部は国際学会等で発表し,典型性の高い情報を用いた視覚デザインに関連する研究成果を学術論文として発表した。
3: やや遅れている
2016年度には,予定通り調査結果の解析が進み,本研究における中心的な課題であった発達による描画の変化の検討が実施された。また研究成果の一部は学会誌上や国際学会で発表された。しかしながら,当初予定に含めていた刺激の作成方針策定や実験環境の構築が期間内に実施できなかったため,計画よりもやや遅れていると判断した。
今後刺激作成を含めて実験環境の構築を進め,当初の予定通り大きさの評定実験を実施する予定である。ただしその際,順序効果が顕著にみられる可能性も考えられるため,必要に応じて追実験を行う。また,前年度の成果発表時に指摘された課題について,調査結果の再解析を進める。また,これらと関連する研究成果を含めた論文の執筆を予定している。さらに最終年度であることから,研究の総括を行う。
本年度実施予定であった実験について,準備段階までに留まったことから,実験実施にかかる人件費等の支払いが次年度に持ち越され,次年度使用額が生じることとなった。
次年度中に実験を実施する予定であり,使用額は漏れなく執行する予定である。
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デザイン学研究
巻: 63 ページ: 69-74
電子情報通信学会技術研究報告
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