研究課題
肥満症患者14名,健常者26名の脳画像データを用いて,肥満症患者の脳形態とBMI,空腹時血糖,HbA1c,心理行動要因との関連を検討した。肥満群は健常群に比べ,左の島皮質と前帯状回の灰白質容量(GMV)が有意に低値であった。BMIは肥満群のみで左島皮質のGMVが有意な負相関を示し,糖代謝指標は有意な関係は無かった。次に,心理指標を含めた解析結果では,左前帯状回のGMVは,BMI(β = -0.61),感情表出困難(β = -0.56),機能的思考(β = -0.42),外発性摂食(β = -0.36),認知不安定性(β = 0.63)と有意に関連した(p = 0.010)。左insulaのGMVは,BMI(β = -0.50),男性(β = -0.40),運動性衝動(β = 0.59)と関連する傾向にあった(p = 0.066)。肥満患者は,内部感覚や情動処理に関わる領域の灰白質の変化があり,これらは刺激誘発性の摂食欲求コントロールや感情処理の困難さと関連することが示唆された。肥満症者25名と健常者32名の心理行動データを用いた心理行動傾向とマインドフルネスの関連性を検討した結果,肥満症患者において異常の認められた神経症傾向,失感情症傾向,食行動異常,注意衝動性(注意・認知の不安定性)の高さとマインドフルネス特性の低さが有意に関連した。また,回帰分析の結果からBMIに対して,抑うつ(β = 0.41),無評価(β = -0.25)が有意な関連を示した(p = 0.001)肥満症患者に認められる精神症状や食行動異常,情動制御の困難さに対する介入方略としてマインドフルネスを高めることの意義が示唆された。
3: やや遅れている
プログラム内容の確定とリクルート開始時期が遅れたため,対象者への介入が当初の予定より遅れている。しかしながら,初年度に引き続き,脳画像データ解析により肥満症における食欲制御不全の神経基盤を心理傾向と絡めてより深い検討を行うことができた。さらに,心理行動データから肥満症者に認められる精神症状や食行動異常,情動制御の困難さがマインドフルネス特性の低さと関連することを明らかにすることで,介入プログラム開発に必要な治療ターゲットを妥当性を確認することができた。
平成29年度は,マインドフルネスに基づく食欲制御プログラムの効果を検証を目的として,肥満者30名,健常者30名を対象に介入試験を実施する。
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