• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実施状況報告書

潜在的レジリエンスを引き出す臨床心理学的アプローチの開発

研究課題

研究課題/領域番号 15K17291
研究機関東京家政大学

研究代表者

平野 真理  東京家政大学, 人文学部, 講師 (50707411)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードレジリエンス / 投影法 / 臨床心理学 / ICT
研究実績の概要

レジリエンスを高めるための臨床心理学的アプローチにおいては、個々人の資質のアセスメントと、その特徴に基づいた介入プログラムが検討されてきている。しかし、現状のアセスメントは自己申告に基づくものであり、特にレジリエンスの低い人にとっては、自分ではうまく自覚できていなかったり、活用できていない力を高めていくことが必要となるため、潜在的なレジリエンスを引き出すことのできるようなアプローチが必要となる。そこで本研究課題では、個人が自覚できていない潜在的なレジリエンスを引き出すアセスメントの開発、および、臨床心理学的介プログラムの開発を行うことを目的としている。平成27年度は、3種類の投影法を基盤としたアセスメントを考案し、調査を通したデータの分析から、レジリエンス・アセスメントとしての内容妥当性を検討した。(1)PFスタディ(Rosenzweig, 1938)に基づいたアセスメント:落ち込み場面の絵を提示し、絵中の人物がどうしたら回復できるかを想定してもらうという既存調査データの再分析を行った結果、「回復の志向性」と「回復達成の手段」が投影されることが示唆された。(2)雨中人物画(Hammer, 1958)に基づいたアセスメント:雨の中の人物の描画特徴とレジリエンスおよびコーピング尺度との関係を量的に検討したところ、「ストレスへの構え」あるいは「準備性」が投影されることが示唆された。(3)文章完成法(佐野・槇田、1972)に基づいたアセスメント:回復や心理的強さという語に続けて記述してもらった文章の内容を分析したところ、社会の言説を反映した「レジリエンス観」および「理想と自己状態の関係」が投影されることが示唆された。(1)~(3)という異なる投影法には、それぞれ従来のような自覚された特性とは異なる、レジリエンスに関わる評価や力動などが反映されることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の計画では、潜在的レジリエンスのアセスメント開発は1種類とし、すぐに標準化を行う予定であった。しかし、1種類のアセスメントで測定できることには限りがあり、潜在的レジリエンスの測定を目指すためには、より多様な投影法による測定の可能性を検討する必要があると考えられた。また、個人の潜在的レジリエンスをアセスメントできることそのものが、介入的効果も含むものであると考えられることから、介入プログラムの内容よりもむしろ豊かなアセスメント開発に力を入れることが重要であると考えられた。従って今年度は、アセスメントの標準化までは到達しておらず、その前段階として3種類の投影法によるアセスメントの妥当性を検討したため、当初の予定よりも進捗が遅れている。

今後の研究の推進方策

平成28年度は、まず本年度で得られた知見の成果をまとめ、学会発表および投稿を行う。その上で、本年度に考案した3種類のアセスメントについて、インターネット調査を通して幅広い年代のデータを収集し、分析を行うことで標準化を目指すとともに、より有用なアセスメントへとブラッシュアップさせる予定である。続いて、当初の計画通りレジリエンス・プログラムを開発し、Webアプリケーションとしての実装を目指すが、その内容はアセスメントを中心に据えた構成とする予定である。同時にアセスメントによって測定されるレジリエンスの潜在的側面を、どのような介入プログラムにつなげられるかを検討し、介入プログラムを考案する。平成29年度には、大学生、高校生を対象とした実証試験を通した効果検証を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

本年度計画において、情報収集およびデータ整理の補助者への謝金を予定していたが、補助者となる人材の確保ができず、謝金が発生しなかった。

次年度使用額の使用計画

次年度は、本年度整理しきれなかった資料やデータの整理にあたり、補助者への謝金が発生する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 大学運動部員の心理的敏感さとバーンアウト傾向の関係における効果的なレジリエンスの検討2016

    • 著者名/発表者名
      大学運動部員の心理的敏感さとバーンアウト傾向の関係における効果的なレジリエンスの検討
    • 雑誌名

      スポーツ精神医学

      巻: 13 ページ: x-x

    • 査読あり
  • [学会発表] 雨中人物画に投影されるレジリエンスの検討―投影されるコーピングとの比較を通して―2016

    • 著者名/発表者名
      平野真理
    • 学会等名
      日本教育心理学会第58回総会
    • 発表場所
      サンポートホール高松・かがわ国際会議場
    • 年月日
      2016-10-08 – 2016-10-10
  • [学会発表] 高校生に対する予防的心理支援としてのレジリエンス教育の実践と効果(2)―長期留学を経験した生徒達の3年間の縦断データから―2016

    • 著者名/発表者名
      岐部智恵子・鈴木水季・平野真理
    • 学会等名
      日本教育心理学会第58回総会
    • 発表場所
      サンポートホール高松・かがわ国際会議場
    • 年月日
      2016-10-08 – 2016-10-10
  • [学会発表] 高校生に対するレジリエンス教育の工夫と効果2016

    • 著者名/発表者名
      鈴木水季・平野真理
    • 学会等名
      日本心理臨床学会第35回秋季大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2016-09-04 – 2016-09-07
  • [学会発表] Designing Information and Communication Technology Applications to Promote Resilience in Japan2016

    • 著者名/発表者名
      Mari Hirano
    • 学会等名
      The 8th European Conference on Positive Psychology
    • 発表場所
      Centre de congrès d’Angers
    • 年月日
      2016-06-28 – 2016-07-01
    • 国際学会
  • [学会発表] レジリエンスの自己認識を目的としたアプリケーションの効果検討―レジリエンス・アプリ実証試験報告(1)―2015

    • 著者名/発表者名
      平野真理・小倉加奈子・能登眸・下山晴彦
    • 学会等名
      日本心理学会第79回大会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場
    • 年月日
      2015-09-22 – 2015-09-24
  • [学会発表] 人は日常生活で何を「できたこと」と思えるのか―レジリエンス・アプリ実証試験報告(2)―2015

    • 著者名/発表者名
      能登眸・平野真理・小倉加奈子・下山晴彦
    • 学会等名
      日本心理学会第79回大会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場
    • 年月日
      2015-09-22 – 2015-09-24
  • [学会発表] レジリエンスを高める臨床心理学的webサービスの開発と検討2015

    • 著者名/発表者名
      平野真理
    • 学会等名
      日本教育心理学会第57回総会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場
    • 年月日
      2015-08-26 – 2015-08-28

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi