研究課題
レジリエンスを高めるための臨床心理学的アプローチにおいては、個々人の資質のアセスメントと、その特徴に基づいた介入プログラムが検討されてきている。その中でも特に、自らの内的資質をうまく自覚できていない人々の潜在的な資質を引き出すようなアセスメントおよび介入についての検討が求められる。本研究課題においては、平成27年度より、(1)刺激画提示法、(2)雨中人物画、(3)文章完成法という複数の投影法を用いたレジリエンスのアセスメントの適用可能性を検討してきた。それらの検討を通して、レジリエンスのアセスメントと介入は非常に密接であることが見出され、当人の潜在的なレジリエンスをアセスメントによって引き出すことそのものが介入となると考えられたため、より豊かな情報を引き出すためのアセスメントの検討を中心に研究を進めることとした。平成28年度においては、まず、上述の投影法の中でも最もアセスメントとして、さらには介入としての適用可能性が高いと考えられた刺激画提示法について質的・量的な分析を進めるとともに、その妥当性を検討するための調査を行い、研究成果について学会発表・投稿を行った。加えて、投影法を用いたアセスメントとして新たな2つの手段を検討した。(4)コラージュに基づいたアセスメント:当人にとってのレジリエンスを導く資源が反映されることが示唆された。(5)写真に基づいたアセスメント:「落ち込み」イメージと「回復」イメージを写真で撮影してもらったところ、2枚の写真の差分から、当人にとって回復に必要な要素が読み取れることが示唆された。
3: やや遅れている
当初28年度に予定していたプログラム完成(ICT化・紙媒体でのワークブック作成)までには至っておらず、やや遅れていると考えられる。しかしながら、当初の計画ではアセスメントと介入プログラムを別物として考え、両方の開発を行う予定であったが、アセスメントの開発が介入プログラムの開発にもなりうるという見通しが立ったため、現在取り組んでいるアセスメントの開発がまとまり次第、介入プログラムを構成することが可能である。
これまでに得られた知見の成果をまとめ、学会発表および投稿を行う。そして、考案した5つのアセスメント方法をまとめ、一連のアセスメントを通したセルフ・ワーク・プログラムを構成したうえで、ICTおよびワークブックとして実装したうえで、大学生・高校生・成人を対象とした効果研究を行う予定である。
当初、28年度にプログラムの実装・印刷を予定していたため、その費用を見込んでいたが、開発研究の進捗状況により28年度には実装までに至らなかったため、使用額にも変更が生じた。
29年度には、当初より予定している国際会議への発表費用、研究補助者への謝金への使用に加え、これまでの知見を基にしたプログラムの構築及び実装・印刷への研究費使用を予定している。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件)
質的心理学研究
巻: 17 ページ: 43-64
Health Psychology Open
巻: - ページ: 印刷中
広島大学大学院心理臨床教育研究センタ―紀要
巻: 15 ページ: 27-30