レジリエンスを高めるための臨床心理学的アプローチにおいては、個々人の資質のアセスメントと、その特徴に基づいた介入プログラムが検討されてきている。その中でも特に、自らの内的資質をうまく自覚できていない人々の潜在的な資質を引き出すようなアセスメントおよび介入についての検討が求められる。本研究課題においては平成27年度より、(1)刺激画提示法、(2)雨中人物画法、(3)文章完成法、(4)コラージュ法、(5)写真法、という複数の投影法を用いて、当人の潜在的なレジリエンスをアセスメントするとともに、現在発揮できていないレジリエンスを促進するための介入プログラムを検討し、各アプローチについてのデータの収集、分析および学会発表、論文化を行ってきた。また、プログラム開発と並行して、幅広い年代を対象としたレジリエンス向上のための既存プログラムを実施する中で、新プログラムの一部を試験的に実施し、投影法アプローチの適用性について検討を行い、内容の修正を行ってきた。その上で平成30年度は、これらの知見についての学会発表を行うとともに、知見をふまえて「潜在的レジリエンスへの気づき」を目指した8つのワークを含む2日間のグループ・プログラムを構成し、大学生を対象に試験的介入実践を行い、その効果および適用性と課題を検討した。プログラム前後の記述の質的検討からは、レジリエンスが人によって多様であり、レジリエンスのプロセスには一見ネガティブな方法も含むさまざまなあり方が存在するということの認識を通して、自分がこれまでに発揮してきた自分なりのレジリエンスへの気づきが生まれ、同時に新たなレジリエンスのあり方にも開かれていく可能性が示唆された。
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