研究課題/領域番号 |
15K17292
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石川 亮太郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員 (80625608)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 強迫症 / 精神的汚染 / 汚染恐怖 / 変身恐怖 / 認知行動療法 |
研究実績の概要 |
精神的汚染のサブタイプである変身恐怖(Fear of Morphing)とは、「嫌悪する人に触ったり、近づいたりすると、自分の身体が汚れたような気持ちになる」という不潔感情と同時に、「嫌悪する人の性格や特徴の一部、自分にうつってしまうのではないか」という不安が生じ、それを中和するために洗浄行為を行う強迫症である(Rachman, 2006)。 本研究では、日本語版変身恐怖尺度の妥当性を検討し、同時に変身恐怖がどのような認知的要因によって悪化されるのかを検証するための質問紙調査を強迫症28名、不安症25名、うつ病者20名に行った。臨床患者を対象にした重回帰分析の結果(n=73)、変身恐怖は、抑うつ、不安、嫌悪感受性といった変数の影響を統制した場合でも、魔術的思考や対人不信感といった変数によって予測されることが示された。当該研究により日本語版変身恐怖尺度の妥当性が示された。さらに、変身恐怖は、当事者の魔術的思考や対人不信感が高い場合、より悪化されるというモデルが示唆された。 強迫症に対する認知行動療法は,強迫症を維持・悪化させている認知的解釈にアプローチすることで強迫症を改善させる精神療法である。その代表的な技法として,認知理論の心理教育,ノーマライズ,ケースフォーミュレーション,理論Aと理論Bの比較,行動実験を紹介する。これらの認知的アプローチと,曝露反応妨害法などの行動的アプローチを併用することで,汚染恐怖の強迫症に対してさらなる治療効果が期待できると考えられる。当該研究では、強迫症に対する認知行動療法のプロトコルを示す論文を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精神的汚染や変身恐怖といった不潔恐怖を伴う強迫症が維持・悪化されるメカニズムを臨床群および健常者を対象にした質問紙調査によって検証してきた。また、不潔恐怖を伴う強迫症に対する認知行動療法のプロトコルを示すことができている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、精神的汚染を伴う強迫症の認知行動理論を検証する研究を進めていき、論文執筆を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の都合により、研究期間の延長をしたことで、一部の研究計画が次年度へと持ち越しとなった。次年度は、主に研究協力者への謝金、英文校閲費、学会参加費などに使用する。
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