研究課題/領域番号 |
15K17296
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
黒田 佑次郎 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (50538783)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 災害時の公衆衛生 / 心理的ストレス / ソーシャルネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、東日本大震災により長期避難生活を余儀なくされている住民の心理社会的影響を評価し、得られた知見をもとに心理的支援のあり方を検討するものである。平成27年度は、飯舘村の高齢者を対象とし、震災後の抑うつ症状の経年変化とその関連要因、そして居住環境別の抑うつ傾向の実態を明らかにすることを目的に分析を行った。また、飯舘村民の避難先の居住環境において、仮設に比べて借り上げ住宅への避難者のほうが、人とのつながりが希薄であることが報告されている。人的交流が少ないことは抑うつ症状のリスクが高まることが先行研究によって指摘されており、避難先の居住環境(仮設・借り上げ住宅)と抑うつ症状の関連を明らかにすることにより、効果的な支援方法の開発に結びつける。メインアウトカムである抑うつ状態の評価は、厚生労働省による基本チェックリストのうつ予防・支援の項目を用いて評価をした(厚生労働省, 2005)。分析の結果、震災3年後の追跡調査では37.2%が抑うつ傾向を示しており、震災前の30.7%に比べて、6.5ポイント増加していた。さらに、多変量解析を行ったところ、女性であること、糖尿病の既往歴があること、IADLの得点が低いことが、独立して抑うつ傾向の発生に関連していた。また、避難先の居住環境によりSocial Networkが異なり、Social Networkが低いことが抑うつ傾向の発生と関連していることを本研究は示した。今後の震災対応への重要な知見をもたらすと考える
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存データを用いて、コホート研究デザインで、震災前後の抑うつ発生の現状とそのリスク要因を分析した。得られた結果は自治体にフィードバックをするとともに、論文投稿中である。第二研究の研究デザインについても有識者を交えて検討をしている。
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今後の研究の推進方策 |
調査結果を自治体にフィードバックをするとともに、健康増進計画などにいかし、ヘルスプロモーションに役立てる。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ入力およびデータ集計に人件費・謝金を計上していたが、今年度の分析については既存データを得ることができたので、来年度に使用することにした。また、共同研究者との打ち合わせに旅費を計上していたが、今年度は電話会議やインターネットを用いて行ったため使用額が少なくなり、来年度の班会議に用いることにした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に予定されている調査のデータ入力およびデータ集計の人件費・謝金に用いるとともに、共同研究者との会議や、自治体と共同して実施する調査に旅費を割り当てる予定である。
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