研究課題
平成30年度は、まず慢性疼痛者を対象とした質問紙調査を実施し、痛みに対する認知行動療法(行動療法、認知療法含む)の治療効果について検討した。目的は、主に痛みに対する認知行動療法の治療効果と脳機能を反映するとされる神経生物学的変数の関連を明らかにすることであった。調査対象1030名のうち、痛みに対する認知行動療法を受けた経験がある者は、178名(約17%)であった。そのうち、効果が低かった者(無しも含む)は117名、効果が高かった者は61名であった。効果が高かった者は、低かった者と比べて、生活障害が少なかった。神経生物学的変数としては、低効果群と比較して高効果群は、行動抑制系得点が低く、環境中の報酬知覚得点が高かった。前者は、潜在的な脅威刺激やその予期に際して注意を喚起し、自らの行動を抑制する傾向を、後者は、行動に随伴する報酬(正の強化子)の知覚の程度を測定するもので、いずれも前頭前野の活動を反映すると想定される。したがって、痛みに対する認知行動療法の効果が低い者は、前頭前野の脳酸素交換量の低下が、行動抑制や報酬知覚に影響を及ぼしていると示唆された。次に前頭前野の脳酸素交換量と神経生物学的変数の関連について、NIRSを用いた健常(非慢性疼痛者)データ収集を目的として、pilot studyを行った。その結果、環境中の報酬知覚が高いものの行動抑制も同時に高い者は、前頭前野の脳酸素交換量が負の値を示す可能性が示された。
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心身医学
巻: 58 ページ: 411~417
https://doi.org/10.15064/jjpm.58.5_411