研究課題/領域番号 |
15K17299
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
井野 敬子 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 臨床研究医 (10727118)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | パニック障害 / 難治性 / 認知行動療法 / アクセプタンス&コミットメントセラピー |
研究実績の概要 |
本研究は、我が国の難治性パニック障害患者の病態に沿うよう改良した集団 ACT プログラム を開発し、パニック障害全般の症状改善を前後比較研究にて検証するものである。治療プログラムはACT をベースにしているるが、難治例に対する治療効果をより高めるために、不安障害の既存の心理療法が、難治対象例のために行っている修正を、研修に行くことで知見を得て、それらを取り入れる試みをしている。現在はプログラムが完成し、臨床施行しながら修正を加えている段階である。 また申請当時は我が国における ACT の治療者はごくわずかであったが、プログラム施行を通じて施設内の治療者育成をはかっている。これはプログラムが完成し効果を検証させた後に、臨床普及への一助となる。 2016年には行動分析とACTの国際学会であるACBSにて、このプログラムを用いた集団ACTのケースを報告した。治療の参加者はプログラム後と3ヶ月後にほぼ寛解を得ており、成績良好であった。また「不安感受性はパニック障害の認知行動療法後の精神症状を予測する」という論文を発表した。 ケースのリクルートはやや遅れているものの、プログラムの修正は各種心理検査の要素を取り入れた、難治性に適したものが出来上がった。継続的にグループミーティンクを行い、研究進行に関する問題点をその都度解決している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プログラムの修正は難治性に適したものがほぼ完成しており臨床施行が既に可能な状態である。プログラム施行を通じて施設内の治療者育成をはかっている。また前段階として、パニック障害の患者が認知行動療法で疾患横断的な精神症状を改善させる予測因子に関する論文を発表し、近日出版される。これにより症状を改善させにくいメカニズムや予測因子が解明され、グループ療法施行時の留意点が明らかになった。 ケースのリクルートはやや遅れている。この理由としては治療者と参加者の予定が合わないことが挙げられる。今後プログラム施行の開催曜日を増やすこととし、より参加者が通院の都合をつけやすいそうに工面した。またプログラムのセッション回数が多いと、参加者の都合がつきにくい。当初は全12回のセッションで行っていたが、今後は8~10回のセッションに短縮したかたちにし参加者を募る。この方法でもリクルートが進まない場合は、「過去に当施設で認知行動療法を受けたが治療反応が得られなかったもの」という適格基準を緩め、対象者を広げて、リクルートすることで問題点を解決する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は引き続き、リクルートを続け治療を提供する。研究の推進方策としては、セッション開催曜日を増やすこと、セッションを短くすることで、リクルートの効率を上げることである。今後もリクルートの状況と研究推進のための対策を、定期的な研究ミーティングでしディスカッションしていく。本年度の目標は現在の目標症例数である30例をリクルートし、解析を行うことある。解析結果は2018年の学会で報告する予定である。また2017年7月には認知療法学会で、難治性パニック障害患者にプログラムを個人で施したケースを発表することが決まっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会で発表する際に、科研費から支出する予定で申請していたが、昨年度はその必要がなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の国際学会の参加費用とする。またその余剰が出た場合は、英語校正、論文の出版費用とする予定である。
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