平成28年度に研究プロトコルに従い終了した無作為割り付け比較試験による介入のデータセットに対し、平成29年度に統計解析を行い、その結果を英文論文にまとめて国際学術誌に投稿している。全評価で欠損値の発生のない精度の高いデータセットが得られ、構造方程式モデル(Structural Equation Modeling:SEM)を用いて共分散分析を行った。健常者である統合失調症患者の家族の精神的負担を概念(潜在変数)として比較する新たな統計解析を行うため、統計専門家へのコンサルテーションを必要とした。多母集団同時解析の結果、家族介入により、発症早期患者の家族の精神的健康度を介入終了時、有意な改善を認めたが、慢性患者では、有意な改善を認めなかった。国際学術誌には、平成30年6月に投稿し、現在、査読の結果待ちの状態である。同誌の編集者に頻繁に連絡を取るなどして、研究成果の社会・ 国民への発信の遅れを最小限にしたい。
本研究の目的とした早期精神病患者の家族の精神的健康度やスティグマを軽減させる有意な介入効果を認めなかったため、さらに介入を改良する理論的根拠を探求し、研究代表者は、重症精神疾患が家族に及ぼす影響を調査した。グラスゴー大学のスコットランド人研究者と協力して質的研究の系統的レビューを行い、統合失調症の介護家族に対する影響を「介護の肯定的側面を中心とする曼荼羅様過程」として理論化した。その研究成果は、国際学術誌に発表されている。
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