研究課題/領域番号 |
15K17305
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研究機関 | 淑徳大学 |
研究代表者 |
中坪 太久郎 淑徳大学, 総合福祉学部, 准教授 (90456377)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ASD / 認知機能 |
研究実績の概要 |
平成29年度においては,昨年度から継続して,ASD患者を対象とした認知機能改善プログラムを実施した。具体的には,「プレ評価およびマンツーマン形式でのプレセッション」,「認知機能改善プログラム」,「ポスト評価およびフィードバックセッション」からなるプログラムを行った。 今回の研究で得られたデータについて,今年度は主にプレ評価から得られたASDの認知機能の特徴についての分析を行った。認知機能障害が広く知られている統合失調症群および健常群の神経心理学的検査バッテリーの結果を用いることで,ASDの認知機能に関する特徴が見出された。その結果,ASDについては,統合失調症ほどではないものの,健常群と比べると全体的に課題得点が低くなっており,特に,物語記憶や単語記憶の課題得点での大きな低下がみられた。また,処理速度を測る課題では,より複雑な課題になるほど処理に時間を要し健常群との差が広がること,注意機能については目立った低下がみられないこと,等についても示された。 今後は,継続して実施している認知機能改善プログラムについて,介入前後の得点の比較からその効果について検証していくとともに,プログラムの内容に関する「参加者からの聞き取り調査」 についても進めていく予定である。特に,フィードバックセッションのなかで,プログラムについての感想や日常生活への般化の程度について聞き取りを行い,その内容については事例的に集約し,最終的なプログラムの修正および実施上のポイントとして活用を行っていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究計画においてはプログラムの期間を約3ヶ月としている。プログラムの効果を考えた場合には必要な期間であるが,参加者である患者の体調の問題等から,途中で参加が難しくなる場合もある。しかし,プログラムの効果について検証するために必要な対象者数については,確保できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度については,これまでに実施しているASDを対象とした認知機能の改善のためのプログラムを継続して行っていく予定である。分析に必要な対象者数を確保した後,結果についての分析についても継続して進めていく。分析方法については,「参加者からの聞き取り調査」に加えて,プログラム前後の課題得点の比較を行う。検査得点それぞれについて,参加者の平均値の前後比較を行い,統計的分析を実施する予定である。 上記の分析結果については,学会や論文等で報告を行う予定である。また,プログラムについての効果が確認されれば,成人期にあるASD患者の認知機能障害を対象とした支援方法としてまとめた上で,ASDの支援に携わる支援者が使いやすい形で発信を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は概ね計画通りの使用額となった。一方で,実施・分析のための人件費等や研究発表の旅費として当初計画していたものが,前年度までの未使用額として残っていたことから,当該年度における次年度使用額が生じた。これらについては,翌年度分と合わせて,データの収集および分析のための人件費,研究参加者への謝金および,研究発表のための旅費等に使用する計画である。
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