最終年度については,平成30年度に計画していた研究計画内容を延長し,継続して実施を行った。当初の平成30年度の計画としては,プログラムを継続して実施するとともに,結果についての分析をさらに詳細に進めていくことであった。ASDの認知機能の査定に関しては十分な参加者が集まっていたが,特に,介入プログラムについては更に参加者を募り,改善プログラムの効果を検証することを目指した。 これを受けて,最終年度においては,ASD患者を対象とした認知機能改善プログラムを継続して実施しながら,その効果に関する分析も行った。研究開始からこれまでに得られたデータの分析からは,ASD患者の認知機能については個別性が高く,報告者が以前に取り組んでいた統合失調症群とは異なる認知機能プロフィールが示されており,そのことが改善プログラムの効果にも影響を持つことが示唆されていたが,最終年度に分析したデータについても同様の可能性が考えられた。 なお,認知機能障害改善プログラムの分析の結果については,「成人期ASD を対象とした認知機能改善の試み」として,日本心理学会第83回大会(2019年9月開催)にて報告を行った。その中において,最終年度に得られた分析結果に関する考察として,「グループによるプログラムの中で,個別の対応をうまく組み込んでいくことの必要性」についても言及した。 最終年度の結果を受けて,ASD患者の認知機能プロフィールの個別性と,その対応のバリエーションを広げていくことの必要性が示されたことから,今後のASDを対象とした認知機能改善療法の取り組みの方向性が示唆されたと言える。
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