研究課題
本研究では, 「抑うつ関連行動」という客観的に観察可能な指標を用いることで,保護者や担任が,児童生徒の抑うつ症状の把握,共有,対応を可能にすることをねらいとする。具体的には,抑うつ症状の「把握」を目的とし,保護者が測定する「家庭用子どもの抑うつ関連行動チェックリスト」と学校の担任が測定する「学校用子どもの抑うつ関連行動チェックリスト」を開発する。この2つのチェックリストを用いることで,保護者と担任が,対象児童生徒の抑うつ症状を「共有」することが可能になる。さらに,児童生徒,保護者,担任を1つのユニットとした抑うつ低減プログラムを開発し,子どもの抑うつへの「対応」を可能にする。平成28年度は,抑うつ低減プログラム開発のための研究を実施した。まず,児童の抑うつに対する集団心理的介入に関する展望を行い(小野・小関,2017;桜美林大学心理学研究),どのような介入要素が,児童の抑うつの低減に寄与するのかという点について整理を行った。同様に,特に教育現場における実践を視野に入れ,どのような観点で心理的介入を実践していくことが重要なのか,整理を行った(小関,2017;Journal of Health Psychology Research)。加えて,抑うつ低減プログラムの確立のための試行を行い,対象となった児童や教員,保護者から,有効性についての聞き取り調査を行った。これらの成果の一部は,国内外の学会での発表,学会誌への投稿と掲載により,広く公表している。
2: おおむね順調に進展している
研究課題全体の方向性に沿って,研究活動を推進することができた。また,介入についても,パイロットスタディを実施することができ,研究全体が進行していると考えている。その一方で,対象となったデータ数の不足や,実施地域の限定性等の課題が残されており,来年度の継続したデータ収集が求められる。
すでに抑うつのチェックリストの概要は完成しているが,十分なデータの確保と信頼性,妥当性の検討に至っていないという課題が残っている。今後も継続して実施していく。また,研究課題の最終的な目標である抑うつ低減プログラムを実践し,その有効性を明らかにしつつ,広く成果を公表していく。
参加,発表を計画していた,日本教育心理学会と,日本認知・行動療法学会の大会日程が重複してしまい,参加が叶わなかったことと,計画していた海外の研究者からの情報収集が日程の都合がつかずに,実施できなかったため。
海外の研究者からの情報収集のための費用として計上する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
桜美林大学心理学研究
巻: 7 ページ: 43-53
Journal of Health Psychology Research
巻: 29 ページ: 89-94
臨床心理学
巻: 16 ページ: 431-434
Health Psychologist
巻: 70 ページ: 4-5
児童青年精神医学とその近接領域
巻: 57 ページ: 114-118