本研究は、難治性不眠症の特徴である睡眠状態誤認の心理的背景の解明と睡眠状態誤認を有する不眠症に対する有効な心理的治療の確立を目的とした研究である。 昨年度までの研究実績としては第一段階である睡眠状態誤認と関連の強い睡眠に関する不安を測定する心理尺度(日本語版Anxiety and Preoccupation about sleep Questionnaire: APSQの開発および妥当性と信頼性の検討を行い、その成果を第41回睡眠学会定期学術集会で発表を行った。第二段階として作成した日本語版APSQを用いて不眠症患者の不眠症状の重症化に寄与する要因の検討を行い、日本語版APSQで測定される睡眠に関する不安が他の睡眠に関連する心理学的要因と比べ、最も不眠症状を予測することが示されたため、その成果を第41回睡眠学会定期学術集会で発表を行った。さらに、当初の研究計画に加え、睡眠状態誤認患者の多くが精神疾患の既往歴がみられることから、不眠症状および睡眠に関する心理学的要因とうつ症状の関連に関する研究を行い、その成果を海外学術誌(Sleep Medicine)に発表した。 研究の最終年度である本年度は、当初の計画では難治性不眠症患者に対する有効な心理療法の開発を行う予定であったが研究代表者の所属先が最終年度から替わったため、研究体制が整わず、予定した臨床試験を実施するには至らなかったものの、難治性不眠症者に対して申請者が開発した新しい心理療法により症状の改善が認められた事例を書籍にて報告した。また、慢性不眠症患者の不眠の重症度には睡眠に関する不安を含めた複数の睡眠に関連する心理的要因が寄与していることを国際学会で発表した(第47回ヨーロッパ認知行動療法会議)。
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