研究課題/領域番号 |
15K17313
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
森本 浩志 広島国際大学, 心理学部, 助教 (20644652)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 役割間葛藤 / 認知症 / 家族介護者 / ストレス / コーピング / メンタルヘルス / 介護負担感 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,平成27年度に作成された介護―仕事葛藤尺度と介護―仕事葛藤コーピング尺度を用いて,本研究の目的(3)「役割間葛藤の種類に応じた,家族介護者のメンタルヘルスの向上につながるコーピングの種類を明らかにすること」について分析を行った。 その結果,5種類の役割間葛藤へのコーピング(予定の調整,介護負担の軽減,情動焦点型コーピング,私的支援追及,公的支援追及)のうち,情動焦点型コーピングはストレス反応を低減し,精神的QOLを向上させること,一方で介護負担の軽減は身体的QOLを低減させること,および公的支援追及は精神的QOLを低減させることが示唆された。 また,公的支援追及および私的支援追及においては,一部の役割間葛藤の精神的健康との関連を緩衝することが示された。すなわち,5種類の役割間葛藤(時間に基づく介護―仕事葛藤,ストレス反応に基づく介護―仕事葛藤,行動に基づく介護―仕事葛藤,仕事-介護葛藤,介護・仕事-私生活葛藤)のうち,公的支援追及の使用が少ない家族介護者は,時間およびストレス反応に基づく介護―仕事葛藤と仕事-介護葛藤が増加すると,ストレス反応が増加したが,公的支援追及の使用が多い家族介護者では,このような関連は見られなかった。また,公的支援追及の使用が少ない家族介護者は,介護・仕事-私生活葛藤が増加すると,ストレス反応が増加したが,公的支援追及の使用が多い家族介護者では,このような関連は見られなかった。一方で,私的支援追及の使用が多い家族介護者は,行動に基づく介護―仕事葛藤と介護・仕事-私生活葛藤が増加すると,精神的QOLが低下したが,私的支援追及の使用が少ない家族介護者では,このような関連は見られなかった。 以上の結果から,情動焦点型コーピングと公的支援追及の使用が,職を有する家族介護者のメンタルヘルスの向上に有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度に実施予定であった調査研究は概ね終了したが,ANT課題を用いた調査については,十分なデータが集まっていないため,平成29年度も引き続きデータ収集を行う予定である。平成28年度に実施した研究については,結果を取りまとめ,平成29年度に発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に実施する調査研究の研究計画が倫理委員会を通過次第,データ収集を行う予定である。これと並行して,平成28年度中に実施した研究の学会発表および学術雑誌への投稿を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に実施した調査に係る費用が,当初の想定より安価であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に実施予定の調査および平成28年度に実施した研究の成果発表に係る国内旅費や外国旅費,調査用紙の印刷費,研究成果の発表に係る英文校閲および論文別刷りの購入,各種消耗品に使用する予定である。
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