本研究の目的は,難病患者のQOL(Quality of Life)に着目し,SEIQoL-DW(O'Boyle et al,1995)(個人の生活の質ドメインを直接的に重み付けする個人の生活の質評価法)を用いて(1)患者のQOLの縦断的な実態把握,(2)患者のQOLに関する患者自身と家族による評価の比較検討,(3)(1)(2)をふまえた患者・家族へのフィードバック面接の有効性の明示であった。 (1)(2)の実施を経た後,最終年度では,(3)を中心に実施し,学会発表及び論文作成に取り組んだ。この(3)について,他の疾患患者の面接もふまえた専門家による内容の検討を通して,①面接効果の再考察及び②フィードバック面接の手続きの考案を行った。具体的には,①については,自己評価・代理評価によるSEIQoL-DWの実施とフィードバック面接を通して,患者と家族の関係性が開かれることや家族にとって新たな患者の心理的側面への気づきが得られること等が挙げられる。②については,心理査定のフィードバック面接を参考にして,SEIQoL-DWの本人評価から時系列にそった手順を提示した。 以上のように,本研究では,難病患者・家族について,心理的支援が必須であるが具体的なアプローチ法があまりない現状のもと,QOLに焦点を当て,半構造化面接であるSEIQoL-DWの本人評価・家族による代理評価を通して,フィードバック面接の手続きを考案した。今後の課題として,量的分析をふまえた縦断的な実態把握やフィードバック面接の有効性の検討等が挙げられる。
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