本研究では、一般国民が取調べをどのように評価するか、また被疑者特徴が取調べに対する国民の評価にどのように影響するかを検討した。その際、参加者が実際の取調べにおける被疑者と取調べ官のやり取りをイメージできるようにするため、先行研究ではあまり利用されてこなかった被疑者と取調べ官の会話形式のスクリプトを参加者に提示した。 前年度までは、大学生及び一般国民を対象に、取調べにおける質問形式に着目し、心理学的に好ましいと言われているオープン質問の多い取調べと、心理学的に好ましくないと言われているクローズド質問の多い取調べを参加者に提示し、どのように参加者がこれらの取調べを評価するかを検討した。その結果、大学生及び一般国民の調査ともに、前者の取調べを適正で威圧的ではなく、前者の取調べで得られた自白はより自発的で信頼できるという結果が得られた。一般国民対象の調査では、被疑者の知的障害の有無が取調べの評価に影響することも示された。 最終年度である本年度では、前年度までの調査と同様にスプリクト形式の調査を実施したが、本調査では質問形式ではなく取調べ手法に着目した。具体的には、証拠、対抗、説得による3つの取調べを比較した。また、本調査では前年度とは異なる被疑者特徴(逮捕経験及び暴力団所属の有無)を提示した。その結果、取調べ手法の種類により参加者の取調べ手法の評価が異なることが示されたが、逮捕経験及び暴力団所属の有無という被疑者特徴は取調べの評価にあまり影響がみられなかった。 このように、本研究では参加者が実際の取調べを想像しやすいスクリプト形式の調査票を用いて、参加者の取調べに対する評価を検討した。被疑者特徴の種類により取調べの評価への影響が異なることが示唆されたため、今後は多様な被疑者特徴を検討することが必要であろう。また被疑者特徴と参加者の特徴との関連を検討することも今後の課題である。
|