研究実績の概要 |
近年,東洋由来の瞑想法を欧米の研究者が取り入れたマインドフルネスと呼ばれる技法が,ストレス・コーピングや心理療法に用いられ,世界的に脚光を浴びており,行動療法,認知行動療法に次いで第三世代の認知行動療法とされている。このムーブメントは心理学,心身医学の領域にとどまらず,神経科学などの領域にまで幅広く関心が持たれているものの,これまでに十分な検討がなされたとは言えない。 これまでの我々の研究では,心身において適応的な情動制御方略とされるマインドフルネスについて,情動刺激呈示時の脳活動や,マインドフルネス傾向と脳構造との関連性について明らかにしてきた。本年度はマインドフルネス傾向と安静時の脳活動との関連性について脳機能画像法(fMRI)を用いて検討した。マインドフルネス傾向の測定には,日本語版5 因子マインドフルネス尺度(Sugiura, Sato, Ito, & Murakami, 2012)を用いた。実験の結果,マインドフルネス傾向の高い人では,内側前頭前皮質と後部帯状皮質の機能的結合がより強いことが確認された。これらの脳領域は,デフォルトモードネットワークと呼ばれ,認知課題を遂行している際には活動が抑制されることが一般的に知られている。さらに,これらの部位間の結合が強いことは,瞑想熟練者におけるこれまでの知見とも合致するものである。長期間の訓練をしていない人であってもマインドフルネス傾向の個人差により同様の違いが見られることを明らかにした。
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