研究課題/領域番号 |
15K17322
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研究機関 | 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 |
研究代表者 |
久保 智英 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所, 産業ストレス研究グループ, 上席研究員 (80464569)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 疲労認知 / 逆境経験 / 心的外傷後成長 / 疲労対処能力 / 交代勤務看護師 / ストレス / レジリエンス |
研究実績の概要 |
本年度では2017年2月に実施したベースライン調査と、2018年2月に1年後の追跡調査の解析を実施した。ベースライン調査では看護職1031名(交代勤務:788名,非交代勤務群:243名)が回答したのに対して、追跡調査では、その内の547名(交代勤務:489名、非交代勤務群:58名)から回答が得られた。調査項目の中に労働観を問う「仕事の反対語は何か?」という質問を設け、休み、遊び、睡眠、健康の選択肢の中から1つを選んで回答させた。ベースライン時のみの結果では回答の違いによって、疲労の回復度や、ケアを行う上で重要な他者の表情を読みとる認知能力に差が出ることが示唆された。具体的には、「遊び」と回答する看護師では他の看護師に比べて、疲労回復度が良好であり、「健康」と回答する看護師が最も疲労回復度が悪かった。また、表情認知に関しては一様に「健康」と回答する看護師の表情認知能力が低下していることが示された。これらの結果は労働観と看護師の疲れ方やケア能力に一定の関連性があることが考察される。また、疲労した際の対処方法についてもベースラインとフォロアップ時の両方で尋ねた。したがって、疲労回復度が最も良好であった「遊び」の回答者や、最も疲労回復度が悪かった「健康」の回答者の日常での疲労回復方法についてさらに解析を進めることとする。それにより、どのような疲労対処方法が看護師の疲労回復に有用であるのかについても解析し、本研究の大きな目的である交代勤務看護師における効果的な疲労マネージメントを検討したい。また、今後はベースライン調査時に回答された仕事に関連して経験した逆境体験や疲労に対するイメージや認識、疲労への対処能力が、1年後の疲労度や睡眠の質、レジリエンス,心的外傷後成長,労働生産性,健康状態として一般的な疾病への罹りやすさ(風邪等)等や、回答者の働き方にどういった影響があるのかについて縦断的に検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の個人的な都合により、平成30年度は研究を計画通り進めることがあまりできなかったことから、研究期間を1年間延長して対応することとした。現在は、随時、データ解析を進めており、関連学会等での発表も行う予定である。以上のことから、現在までの達成度を「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度ということもあり、知見のまとめが主要な課題となる。今後は、現在までに得られたベースライン調査と追跡調査のデータに関して、ベースライン調査時の労働観や疲労認知、逆境経験等が、1年後のレジリエンスや心的外傷後成長、疲労度、睡眠の質、表情認知などにどういった影響を有するのかについて詳細に検討する。それにより、本研究の知見を、交代勤務看護師における効果的な疲労マネージメントを検討するための有用な基礎資料としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、研究代表者の個人的な理由により、当該年度に研究が計画通り進めることができなかったことから、1年間延長して対応することとしたのが大きな理由である。
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