研究課題/領域番号 |
15K17326
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鈴木 敦命 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (80547498)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 社会的認知 / 信頼性 / 顔 / 評判 / 学習・記憶 / エイジング |
研究実績の概要 |
人間が他者の信頼性について判断をする際には,その人物の顔,評判,実際の交流経験など,種々の情報源を活用する。本研究課題は,そうした様々な情報源にもとづく他者の信頼性判断を検討する一連の実験を遂行し,人間の信頼性判断がどのような特徴をもち,その背後にどのようなメカニズムがあるかを明らかにすることを目指している。以上の目的を達成すべく,平成28年度には以下の3点のことを主に遂行した。 (1)昨年度に引き続き,顔にもとづく信頼性判断の実験に必須の基礎材料である,顔画像データベースの整備・拡張をおこなった。29名の参加者を対象に,真顔の画像を複数の角度から撮影する他,喜びや怒りなどの表情のある画像も撮影した。 (2)実際の交流経験(協力や裏切りなど)にもとづく他者の信頼性の学習が“顔の見え”に与える影響を調べる行動実験をおこなった。実験の結果,参加者を裏切る人物の顔は協力する人物の顔よりも目が細く見えるようになることが明らかになった。つまり,信頼できない顔のステレオタイプ的特徴である“細い目”の知覚が不信感の学習によって強まることが示唆された。この研究成果は日本感情心理学会第25回大会で報告予定である。 (3)顔にもとづく他者の信頼性判断,および,評判の学習によってその判断が更新されるプロセスの背景にある認知・神経過程を探るため,機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた実験をおこなった。具体的には,参加者にとって未知の人物の信頼性を判断し,その判断に対するフィードバックを得るという課題をおこなっている間の脳活動をfMRIによって計測した。この実験は現在も継続中であり,途中成果をOrganization of Human Brain Mappingの2017 Annual Meetingで報告予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は,他者の信頼性判断における多様な情報源の統合を特徴づける認知・神経過程の解明であるが,平成28年度は実際の交流経験が顔の見えに与える影響を調べる行動実験や,評判にもとづく信頼性判断の更新の背景にある認知・神経過程を探るfMRI実験をおこなった。いずれの実験の成果も平成29年に国内外の学会において発表予定である。以上のことから,研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究を効率的に進めるため,大学院生にリサーチ・アシスタントなどとして協力してもらう。平成28年度と同様に,fMRI実験,行動実験など複数の研究を並行して実施する予定なので,それぞれの研究を異なるリサーチ・アシスタントに補助してもらう。また,いずれの研究も特殊な装置の操作や多数の心理検査の実施など,複雑な手続きを含むため,円滑に研究を進められるように事前にリサーチ・アシスタントと十分に協議する時間を設ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度はfMRI実験(予備実験を含む)に60名程度の参加者を見込んでいたが,当初の予想に比して参加者の応募が少なく,かつ,MRI装置の利用可能な日程が限られていたことから,予定していた参加者数の実験が完了できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度もfMRI実験を継続し,予定していた参加者数のデータ取得を完了する。
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