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2016 年度 実施状況報告書

自閉症者の身体近位空間の変容に基づく視触覚間の過剰な分離/統合メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K17333
研究機関国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)

研究代表者

井手 正和  国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 特別研究員(PD) (00747991)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード視触覚間統合 / 身体近位空間 / 時間順序判断 / 時間分解能 / 触覚 / 聴覚 / 視覚
研究実績の概要

我々が自己身体と関連し、それを取り巻く空間(身体近位空間)の脳内表現を形成するには、視覚と触覚の統合が重要な役割を果たしている。一方、自閉スペクトラム症者では、異なる感覚モダリティの刺激を連続提示した時、その順序を正確に判断することが困難である(時間分解能が低下している)ことが報告されている(Boer-Schellekens, 2013)。これは、自閉スペクトラム症者が異なる感覚を過剰に統合し易い傾向を反映していると考えられた。昨年度までに、視覚と触覚の時間順序判断課題について、定型発達者でも、質問紙(AQスコア)で評定される自閉傾向が高いほど、時間分解能が低下する傾向を見出した。高い自閉傾向者で見られる異種感覚間の時間分解能の低下を検証するためには、単一感覚の時間分解能と比較することが不可欠だと考えられる。本年度は、視覚、触覚、聴覚それぞれについて時間順序判断課題を実施した。また、聴覚と触覚の組み合わせで、同様の課題を実施した。その過程で、自閉スペクトラム症者の1症例が、極めて高い時間分解能を示すことを見出した。この当事者は、触覚と聴覚それぞれ、触覚と聴覚の組み合わせの時間順序判断課題で、それぞれ時間分解能は6.5ミリ秒、7.6ミリ秒、11.5ミリ秒の時間分解能を示し、これらは全て定型発達者の平均値の標準偏差の2倍を上回る値であった。しかし、視覚、視覚と触覚の組み合わせでは、それぞれ時間分解能は19ミリ秒、27.8ミリ秒であり、これは標準偏差の2倍の範囲内であった。これらの結果は、自閉スペクトラム症者では、各感覚モダリティで高い時間分解能を示していた場合、その組み合わせでも同様に高い時間分解能を維持することを示唆する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

高い自閉傾向をもつ実験参加者では、視触覚間の時間分解能が低下するという発見に基づき、単一感覚での時間分解能との比較を行うため、視覚、触覚、聴覚それぞれで時間順序判断の課題を実施した。また、極めて高い時間分解能を示す1症例に着目し、全てに感覚について網羅的に時間分解能を検討した。先行研究では、自閉スペクトラム症者では異種感覚刺激の時間分解能が低下すると言われてきたが、こうした状況でも、自閉スペクトラム症者が必ずしも時間分解能の低下を示すわけではないことを示した。この結果から、当事者を一括りにするのではなく、個人特性に着目し、単一感覚・異種感覚の処理の特徴を検討する必要性を示した。

今後の研究の推進方策

単一感覚刺激に関する時間分解能と異種感覚間のそれとを比較する。自閉傾向が高い実験参加者では、単一感覚と異種感覚との差が大きく表れると予想する。この差は、先行研究で報告されている自閉スペクトラム症者における過剰な異種感覚統合を反映する可能性がある。また、複数のアセスメントから結果を解釈することで、どのような個人特性をもつ場合に異種感覚間の時間分解能が低下する傾向があるのかを検討する。

次年度使用額が生じた理由

本年度までの研究成果を論文および学会で発表するため、印刷費・出張費を残した。

次年度使用額の使用計画

研究成果を論文および学会で発表するため、印刷費・出張費として使用する。また、個人特性と異種感覚での時間分解能の低下との関連性を検討するために、個人特性評価のためのアセスメントキットを導入する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Extraordinary enhanced temporal resolutions in touch and sound in a person with autism-spectrum disorders: a single-case study2017

    • 著者名/発表者名
      Ide, M., Yaguchi, A., Wada, M.
    • 学会等名
      第94回日本生理学会大会
    • 発表場所
      浜松アクトシティコングレスセンター
    • 年月日
      2017-03-28 – 2017-03-30
  • [学会発表] Tactile temporal resolution might correlate with degree of hypersensitivity in individuals with autism-spectrum disorders2016

    • 著者名/発表者名
      Yaguchi, A., Ide, M., Wada, M.
    • 学会等名
      Neuroscience 2016
    • 発表場所
      サンディエゴ・コンベンションセンター
    • 年月日
      2016-11-12 – 2016-11-16
    • 国際学会
  • [学会発表] Tactile temporal resolution associates with hypersensitivity in persons with autism-spectrum disorders2016

    • 著者名/発表者名
      Yaguchi, A., Ide, M., & Wada, M.
    • 学会等名
      第39回日本神経科学学会大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2016-07-20 – 2016-07-22

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公開日: 2018-01-16  

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