自閉スペクトラム症者では、障害物に頻繁に接触するといった特徴が見られる。こうした障害の背景には、脳内における身体近位空間の変容が関与すると考えた。Ide & Hidaka(2013)では、身体近位空間を変容させるような条件では、視覚と触覚の時間的な順序判断が難しくなることを報告した。本研究では、この視-触覚間の時間順序判断課題の成績の低下が、自閉症傾向が高い人では起こりづらいことを見出した。また、触覚と聴覚に関する時間処理精度が、定型発達者のおよそ10倍の自閉症の症例を見出した。以上の成果から、感覚刺激に対する過剰/過小な時間処理精度が、身体近位空間の変容の背景にあることが示唆された。
|