研究実績の概要 |
脳イメージングによる生理的観測変数から高齢者のワーキングメモリを予測するモデルを作成することを目的とし研究を進めた。空間分解能に優れるfunctional magnetic resonance imaging(fMRI)のデータに時間分解能に優れるMagnetoencephalography(MEG)を加えてより神経情報伝達を捕えることを試みた。 本年度は加齢研究に先立ち,若年者を対象とし,fMRIとMEGによる短期記憶課題遂行時の脳情報伝達を捕える手法およびその解析法の確立を行った。視覚的ワーキングメモリを求めるChange detection paradigmを課題として用い,セットサイズとラテラリティの効果を調べた。また,再現性の検証のため,実験を二度行い(別日),二セットのデータを得た。 VBMEG(Sato et al., 2004)を用いた信号源推定の結果,両日データともセットサイズの効果,ラテラリティの効果が頭頂―後頭領域(IPS, IOS [BA] 7, 19, 39, 40) で見られた。得られた電流データを用いた重回帰分析によって,視覚的ワーキングメモリの処理モデルの作成を行った。その結果,右側のBA7,左側のBA19,両側のBA40によって課題成績が高い精度で予測できた。今後は聴覚刺激を用いて同様の実験を行い,モダリティ間の比較を行う。なお,いくつかの先行研究では,MEGの電流源推定の際,fMRIデータはその推定制度を向上させるとの報告があるが,本研究の結果から,必ずしもfMRIがMEGの電流源推定の精度を向上させるわけではなく,高次認知/知覚機能を要求する課題においては適さない可能性が示唆された。
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