平成29年度の研究計画は,これまでの研究成果を総合し,アメリカ産業科教育協会による技術教育のためのカリキュラム開発実践とその技術教育史的意義をまとめることであった。また,国際的な研究会を組織し,研究成果を検証するとともに,今後の研究課題を設定することを課題とした。 研究の結果,アメリカ産業科教育協会による技術教育のためのカリキュラム開発実践とその技術教育史的意義として,①A Curriculum to Reflect Technology(1947)の作成を主導したW.E.ウォーナーは,作業分析に基づくそれまでの産業科カリキュラムのあり方を批判し,社会経済における技術を知的に評価・判断できる消費者の育成を課題とし,②その課題を達成するために,産業科で対象とすべき技術を,現実の技術のあり様から,生産技術とそれを支える技術の総体としてとらえ,③その帰結として,A Curriculum to Reflect Technology(1947)において,製造,建設,動力,輸送,通信からなる新規的な5単元構成を提起するに至った点を明らかにし,それらを論文としてまとめることができた。 この論文の検討会を,2017年7月にEastern Michigan Universityで,P.L.Cardon教授をはじめ米国研究者と開催することができた。その結果,アメリカ産業科教育協会による技術教育のためのカリキュラム開発実践が,米国カリキュラム実践史における前史として重要な位置を占めること,これらを担ってきた主体形成の解明が今後の課題となるなど,貴重な指摘を得ることができた。 こうした検討会の指摘を参考に,平成30年度(2018年度)基盤研究(B)(一般)に,研究課題名「現代米国における技術教育カリキュラム開発とその主体形成に関する教育実践史研究」で申請することができた。
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