研究課題/領域番号 |
15K17342
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
山崎 智子 南山大学, 人文学部, 講師 (20636550)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イングランド大学史 / 教養教育主義 / 技術・専門職教育 / 高等教育政策 / 「市民大学」 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、技術・専門職教育をめぐる大学政策の分析と一次資料の収集を行った。 まず、前年度に引き続き、19世紀末から20世紀初頭にかけての大学補助金に関する政策文書を分析した。その結果、19世紀半ば以降に地方都市に設立されたカレッジが20世紀初頭に大学に昇格(いわゆる「市民大学」)し、授与される学位が多様化するなかで、教養教育とは特定の科目を指すのではなく、目指すべき理念として位置づけられるようになった過程が明らかになった。ここでいう特定の科目とは、既存の大学において学位試験として課されていたいわゆるアーツ・サイエンス科目のことである。しかし、新設の大学における学位試験では、より専門性の高い科目が導入された。大学補助金に関する諮問委員会は、専門性の高い科目を通じてでも教養教育を行うことは可能であるとみなすようになったのであった。 また、技術教育あるいは専門職教育という用語は当時の議論において厳密には区別されずに用いられている一方で、職業教育という用語は政府文書において管見の限り用いられていないことも明らかとなった。この点は、現代の大学教育をめぐる議論にも示唆を与えるものであると考えられる。 以上の分析の内容を、日本教育学会第75回大会で発表した。 一次資料の収集に関しては、海外調査を実施し、政府文書及び大学カレンダーの閲覧及び複写を行った。調査時期が年度末近かったこともあり、収集資料の整理及び分析は次年度に行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
延期となっていた海外調査を実施し、一次資料の収集を終えることができた。併せて、前年度に引き続き、当時の政府文書における教養教育の定義の変容の意義についての分析を行った。当該年度末までに予定していた計画通りに作業を終えることができたため、概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、前年度に収集した一次資料を整理・分析し、当時の大学におけるカリキュラムの特質を明らかにする。その際に、市民大学のカリキュラムに特に注目する方針である。その上で、当時の大学教育に見られる教養教育主義の意義を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に海外調査を行った関係で、当初予定していた資料整理のために必要な費用の使用が次年度にずれ込んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、資料整理のために使用する機器の購入など物品費を中心として使用する予定である。
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