世界中で失業問題の深刻化が進み、失業者の自立に向けた包括的な支援のあり方を探る必要があるなか、本研究は中国、香港、台湾を事例にした比較研究を行っている。具体的には、地域の諸組織がいかに連携体制を図り、失業者支援を行なっているのかについて考察を行い、コミュニティを基盤とする失業者の自立支援の実態を明らかにしてきた。 平成29年度には特に台湾における障がい者に対する就労支援の実態に着目して、調査を行いました。具体的には、「台北市身心障礙者就業大楼」、「第一家園永愛発展中心」、「第一家園身心障礙者就業服務中心」等において、職員に聞き取り調査を行った。それらの調査を通して、台湾における障がい者に対する就労・自立支援の実態、特徴、及び課題等を明らかにすることができた。 また、以前から着目してきた移民に対する自立支援教育についての調査も行い、台湾における蔡英文の新政権下で打ち出された「新南向政策」の下で、移民への関心が高まりつつある。その中で、東南アジアからの移民を社会的弱者としての存在として捉えるのではなく、社会的資源として捉える上での新たな支援のアプローチを解明してきた。 さらに、同じく香港における東南アジア諸国や中国大陸地区からの移民への支援についても調べた。その中で、とくに政府とNGO団体との連携関係に着目し、両者がどのように協働関係を図っているか、それぞれどのような役割を果たしているかを明らかにした。中国大陸地区における就労・自立に関わる教育支援者としての社区教育職員に関する調査も行い、職員が果たす役割や職員養成の現状と課題について明らかにした。 今年度の調査成果について、第8回教育に関する環太平洋国際会議や日本社会教育学会第41回東北・北海道研究集会等の国内・国際学会で研究発表を行い、情報発信と意見交換を行った。
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