本年度は基準財政需要額の算定内訳と地方教育費の構成要素に着目して実支出額と基準財政需要額の比較検討を行った。具体的には地方教育費の高等学校費を構成する各費目の予算額と基準財政需要額算定の構成要素となっている項目の実交付額を比較検討していった。その中でも特に人件費に大きな特徴を見いだすことができた。 高等学校の人件費は財源が地方交付税であるため、県が人件費の額を自由に決定することができるものの、従来は義務教育費国庫負担の裏負担としての地方交付税と同様に高等学校でも人件費の基準財政需要額が尊重されていた(金井2003)。しかし、2015年度の人件費の基準財政需要額に対する人件費実支出額の割合を県ごとに算出して「1」が人件費の基準財政需要額と人件費実支出額が均衡状態にある状態、「1」を超えれば実支出額が上回っている状態を表すとした場合、大半の県が「1」を下回っており、県が基準財政需要額に満たない額の人件費を計上している状況が読み取れた。この結果は前年度に明らかにした、各県での高等学校費総額が基準財政需要額よりも高い水準で推移していることとは異なり、人件費以外の項目が多く計上されることによって高等学校費支出の全体が基準財政需要額よりも高い比率となっていることが推測される。 財政力指数を切り口としていくつかの県を比較したものの、両者の間に大きな違いを発見することはできなかった。人件費の支出額と基準財政需要額の比率になぜこのような県間差が発生しているのかを明らかにすることは今後の課題として残っている。
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