研究課題/領域番号 |
15K17350
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
酒井 佑輔 鹿児島大学, かごしまCOCセンター, 講師 (30632591)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | unlearn / レイシズム / 人種差別 / 社会教育 / 社会的排除 / ESD |
研究実績の概要 |
2015年度は、unlearn概念の基礎的理解をはかるため、欧米におけるunlearn概念を踏まえたマイノリティ排除や人種差別に抗う教育理論、ポストコロニアリズムと教育に関する文献研究を中心に進めた。2015年11月には、カナダのブリティッシュコロンビアにおいて、unlearn概念に基づく人種差別に抗う教育実践に関する調査も行った。ブリティッシュコロンビアでは、教育委員会が手掛けた“Unlearn Racism”という教材や、カリキュラムに関する調査を今後進めていくための調査基盤(人間関係の構築等)を醸成することができた。また、地元のマイノリティ排除(主に移民・難民)や人種差別撲滅に関わるNPO・研究者等とも交流をはかり、unlearn概念と人種差別に抗う教育実践の関係性について聞き取り調査を行った。 また、2015年度の鹿児島大学共通教育の授業「鹿児島から考える多文化共生(Unlearning Multicultural Societies in Kagoshima)」(前・後期)や、公開講座「台湾とのつながりから考える鹿児島の多文化共生(2)~外国人旅行者に配慮した観光まちづくり~」(2015年7月)等の教育実践を通じて、unlearn概念の可能性や課題に関して取り扱った。 これらの研究活動の進捗状況や成果は、日本社会教育学会第62回大会における「社会教育において人種・人種主義(レイシズム)を問うことの現代的意義と課題」と題した口頭発表(2015年9月)や、『日本社会教育学会年報第59集 社会教育としてのESD』での「ESDは地域の社会的排除/包摂とどう向き合うか ― ガヤトリ・スピヴァクによるunlearnの可能性―」(東洋館出版社、2015年)としてまとめ、研究成果を広く社会に還元した。これは日本国外でのレイシズムやそれに抗う社会教育実践の歴史や現状、国内で広がるレイシズムに対するunlearn概念の可能性を問うものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
長期休暇中にグリネル大学(アメリカ)のケショー・スコット氏が既に20年以上実践している“unlearning Racism”ワークショップへの参加を計画していたが、実行に移すことができなかった。また、日程調整がうまくいかず、ブリティッシュコロンビア滞在時にヴァネッサ・デ・オリベイラ・アンドレッチ氏(ブリティッシュコロンビア大学)とunlearn概念について議論を深めることができなかった。 また、当初予定していた学会発表からの年報投稿においても、日本社会教育学会第62回大会における「社会教育において人種・人種主義(レイシズム)を問うことの現代的意義と課題」と題した口頭発表(2015年9月)は実現できたものの、それを鹿児島大学生涯学習教育研究センター年報等へ投稿することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度は長期休暇を利用して北米並びにインド調査を中心に計画を遂行予定であるが、2015年度に実施できなかったグリネル大学(アメリカ)のケショー・スコット氏が既に20年以上実践している“unlearning Racism”ワークショップへの参加をまずは優先して実行する。また、ブリティッシュコロンビアの教育委員会が手掛けた“Unlearn Racism”教材や、カリキュラムに関する調査については継続して実行する。 研究成果については予定通り、日本社会教育学会並びに日本国際理解教育学会での発表を目指す。また、日本社会教育学会第62回大会において実施した口頭発表「社会教育において人種・人種主義(レイシズム)を問うことの現代的意義と課題」についても、論文化して鹿児島大学生涯学習教育研究センター年報等へ投稿予定である。
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