本研究は、学力保障を基盤に据えた「持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development:以下、ESD)」の実践を日本の学校教育の場に広げるために、理論と実践の往還を重視した教育方法学的アプローチによって、教育目標の設定と教育評価の方法論の構築を行うとともに、それに基づくカリキュラムを開発することを目的としている。 最終年度である令和元年度の主な研究の成果は、以下の2つにまとめられる。1つ目は、前年度までの研究成果に基づきながら、教育目標の設定や教育評価の実践に際して不可欠となる学力のあり方の検討を進めるとともに、そうした学力を育成するための取り組みのあり方の検討も進めたことである。2つ目は、教員向けの研修会等を通してESDの視点を取り入れたカリキュラム開発や授業づくり等に関する研究成果を発信したり、実践づくりや実践の検討等に関わらせていただいたりしたことである。 補助事業期間全体を通じて、自身がこれまでに行ってきた開発教育研究およびグローバル教育研究の成果をふまえて、主に日本とオーストラリアにおける理論と実践の研究蓄積の批判的な検討を行うとともに、日本の教員との議論や授業研究も進めてきた。これにより、教育目標の設定や教育評価の方法論に関する理論的な枠組みや実践のあり方の整理・構築、カリキュラム開発の指針の明確化、具体的な実践づくりとその検証等に関する研究を進めることができた。特に、「学校づくり」「カリキュラム編成」「授業づくり」を視野に入れた取り組みの重要性とその具体的なあり方に関する検討を進めたことは、充実したESDを展開し、それによって学習者の学力保障を実現するための方途を明らかにするうえで重要な意義を持つものであると考えている。今後は、こうした研究をさらに進めるとともに、研究成果のさらなる発信にも努めたい。
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