研究課題/領域番号 |
15K17352
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
安宅 仁人 酪農学園大学, 農食環境学群, 講師 (20513675)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 教育行政 / 教育委員会 / 子ども行政 / 一元化・統合・パッケージ化 / 教育と福祉 / 人口減少社会 / 北欧モデル / 国際比較 |
研究実績の概要 |
(1)研究の目的の点から 本研究は,基礎自治体において子ども関連行政のパッケージ化を推進することが子どもの成長発達を保障するとともに,若者世代の移住・定住を促進する機能があるとの仮説に立ち,国内の先進自治体と北欧諸国の取り組みに焦点をあて,その効果の実証を目指している。 (2)研究実施計画の点から 以上の目的を達成するために,当該年度は具体的に以下のような調査・研究を行った。 ①国内自治体調査・・・国内中規模自治体における子ども関連行政のパッケージ化の有効性を明らかにするために,教育委員会内に学校教育を担当する部門に加えて児童福祉さらには小児医療部門を統合した大阪府河南町の「教・育部こども1ばん課」を2016年7月に訪問し担当者にヒアリング調査を行った。待機児童を生まない町の方針は子育て世代から評価され,徐々にではあるが0歳児が増えた実績があることが確認できた。なお,以上の河南町の取り組みについて学会で共有・検証すべく,日本教育行政学会第51回大会(大阪大学,2016年10月)に同町の担当者を課題研究報告者として招き,その成果と課題について議論を行ったところである。 ②国外動向調査・・・子ども行政にかんする国外(特に北欧)の動向を調査するために2016年8月下旬~9月上旬にデンマーク・コペンハーゲン市を訪問し,包括的支援者としてのソーシャルペダゴジ(以下,「SP」という)にかかわる複数の実践家,養成機関,関連組織にインタビューを行った。SPの活動は保育,ユースワーク,福祉,精神医療といった広範な領域にわたっており,「人間を対象として,人の人生・生活をサポートするものであり,その人生のポテンシャルを下支えし,社会の中で参加者として活動していけるサポートをする」ことを目的としたSPは,同国において人間の成長・発達を包括的に支援する専門職として位置づけられていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定では国外(北欧)調査として,2017年2月上旬に現地コーディネーターのアレンジのもと,デンマークの漁村地域(フォーボー・ミットフュン)を訪問し,人口減少が進む自治体における住民の福祉・教育の基盤の維持の現状を明らかにすることを予定していた。また,引き続いてフィンランドを訪問し,人口に占める子どもの比率が高い小規模自治体(ユバスキュラ近郊)における教育・福祉・人口政策の動向についてヒアリングを行う予定であった。 しかしながら,2017年2月に研究代表者が入院加療を余儀なくされたことから,上記調査計画をいったん白紙とせざるを得なくなり,研究進捗に一定程度の遅滞が生じることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題として残されているものは以下のとおりである。国内自治体調査については,当初研究計画に示したように,複数の自治体の財政分析を行い,教育・子育て・児童福祉・母子保健への予算投入と,人口増減の動向との関連性の有無を明らかにする作業を進める。 また,国外の動向に関する研究については,上記「現在までの進捗状況」で触れた研究の遅れを取り戻すべく,デンマークならびにフィンランドにおいて人口減少が進む地域あるいは非人口稠密地域の調査を行い,これら地域で住民の教育・子育て・医療をはじめとする生活基盤・社会インフラが具体的にいかなる制度あるいはシステムで持続可能性を有しているのかを明らかにすることを最重要課題として設定する。 しかしながら,研究代表者の入院加療のため当初予定していた調査を中止せざるをえなくなり研究の進捗状況に一定程度の遅れが生じたことから,最終年度である2017年度中に成果をまとめるうえで困難が伴うことが考えられ,研究期間の延長も視野に入れながら研究を推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初2017年2月に予定していたデンマーク,フィンランドの2か国調査が研究代表者の体調不良(入院加療)により実施できなかったことに伴い,計上していた旅費ならびにコーディネーター兼通訳への謝金相当額の未執行が生じたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
一部未実施となっていたデンマーク・フィンランドへの訪問調査を2018年2月に計画しており,旅費ならびに現地コーディネーター兼通訳への謝金等として当該「次年度使用額」相当分を執行する見込みである。
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