研究課題/領域番号 |
15K17354
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研究機関 | 尚絅学院大学 |
研究代表者 |
金井 徹 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 講師 (00532087)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 戦後教育改革 / 教育理念 / 民族共同体 / 務台理作 |
研究実績の概要 |
本年度は主に戦中期(1930年代後半から1940年代年代前半)における知識人達の民族共同体構想の内容と、教育に関する言説の関連を明らかにするために、戦後知識人の著作集を中心に収集を行った。特に戦後改革に関与した矢内原忠雄、南原繁、高木八尺、和辻哲郎、津田左右吉等の著作、戦後教育改革に関与した務台理作、高坂正顕等の著作、田辺元や高山岩男等の京都学派関連の著作を収集した。また、本研究をい遂行するために、日本教育学会、日本教育行政学会、日本思想史学会等において情報収集を行うとともに、国立国会図書館を利用して、1930年代後半から1940年代前半にかけての各種雑誌・論文・新聞及び先行研究を収集し整理を行った。収集した資料をもとに、民族共同体に言及した知識人は誰か、どのような社会的・思想的背景を持っていたのか、各論者の民族共同体の論点に違いはあったのかについての分析を継続して行っている。本年度は、とりわけ戦後教育改革期において、教育刷新委員会委員などとして戦後日本の教育理念の形成に関与した務台理作に着目して、その戦前・戦中期における民族共同体の論理についての分析を行った。その成果については、東北教育学会研究紀要第19号に研究論文として発表した。現在は、務台の戦前・戦中期における民族共同体の論理は、戦後において変容したのか否かについての分析を行っている。また、そうした務台の民族共同体の論理を中心として、他の戦後知識人の論理との異同についての分析を継続して行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
戦後教育改革に関与した知識人の著作類については概ね収集することができた。また、本年度における検討の中心であった務台理作に限定していえば、戦前・戦中期の民族共同体の論理と教育理念との関連について把握することができた。戦前・戦中期における務台の教育理念は、民族共同体の枠組によって捉えられる国家において、国民文化の創設を目指すものであり、個人の価値から導かれる教育目的と国家から導かれる教育目的との綜合を目指す国民教育の実現を目指すものであったと総括することができる。こうした務台の民族共同体の論理と教育理念との関連を今後の分析の視点として、戦後知識人の民族共同体構想と戦後教育改革との関連について、対象範囲を拡げて検討を行うことが可能となったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、戦後改革期における民族共同体の論理の変容と教育改革との関連を明らかにするために、帝国議会の議事録、国会議事録、教育刷新委員会等の戦後教育改革に関連する審議会の審議録、各種雑誌、著作類を中心に収集し整理を行う。収集した資料をもとに戦後知識人の民族共同体の論理を抽出し分析する。そして、戦後の民族共同体の論理は変容したのか否か、変容したとすれば、どのように変容したのかを検討する。また、民族共同体の論理は、教育改革との関連においてどのように位置付けられ、どのように具現化されようとしたのかについての検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
戦後教育改革関連図書として、教育刷新委員会・教育刷新審議会審議録を購入予定であったが、差引額では購入することが不可能であり、次年度にまとめて購入することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
戦後教育改革関連図書として、教育刷新委員会・教育刷新審議会審議録の購入費用に充当する。
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