研究課題/領域番号 |
15K17358
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研究機関 | 武蔵野美術大学 |
研究代表者 |
田中 千賀子 武蔵野美術大学, 造形学部, 講師 (10711674)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 学校園 / 新教育 / 奈良女子高等師範学校 / 木下竹次 / 大正 / 学校施設 |
研究実績の概要 |
本研究は、大正期の学校園について個別事例の検討をもって実態を明らかにするものである。2年目となる2016(平成28)年度は、(1)大正期の新教育の実践と学校園について、京都府内の複数の事例調査を続けること、また奈良女子高等師範学校附属小学校と木下竹次の事例調査を進めること、(2)現代の教育実践について、学校の屋外での実践を対象に調査をすすめることであった。
全体としては、基礎調査を継続して、大正期における公立小学校の実践の全国的な動向を概観するために、学校沿革史や教育関係雑誌などの調査をおこなった。 (1)については、まず京都市内の学校園また関連する施設としての学校林に関して、2015年度に引き続き文献調査をすすめた。また奈良女子高等師範学校附属小学校に関しては、学校文書などの史料収集と分析をすすめ、その成果を教育史学会で報告した(田中千賀子「奈良女子高等師範学校と附属学校における学校園」教育史学会第60回大会)。さらに同校での小学校での新教育実践と学校施設の関連性に焦点をあてた考察結果を、日本教育学会の研究誌に投稿した(田中千賀子「奈良女子高等師範学校附属小学校の学習園-大正新教育期における屋外の学校施設-」3月31日受領、審査中)。関連して近代の「自然愛」の言説などを対象とする研究論文の論評をおこない、研究誌に掲載された(田中千賀子「論評」『日本教育史研究』第35号)。 (2)については、屋外での実践に関する先行事例について資料などを収集しつつ、実践における参与観察もおこなった。その成果が研究誌に掲載された(田中千賀子「野外における造形ワークショップつくってはいろう虹色テント―長野県東御市スケッチ大会&アートチャレンジにおいて―」『大学造形美術教育研究』第15号)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体として、基礎調査を継続して、大正期における公立小学校の実践の全国的な動向を概観するために、学校沿革史や教育関係雑誌などの調査をすすめることができた。
(1)について、奈良女子高等師範学校や附属小学校の調査については、十分な資料を得ることができ、成果報告も順調におこなえている。一方京都府の学校園については、学校林といった関連施設の重要性が確認できたものの、個別事例に即して詳細に検討する余地があり、その成果を公表していく必要がある。また研究計画当初に予定していた兵庫県の大正期の事例検討も進め、とくに学校林との関係をふまえて考察する必要がある。
(2)について、研究会や学会、とくに新たに所属した日本森林学会などを通して、実践者との交流が増えたことにより、多様な参考事例の情報が得られ、インタビューや参与観察などによって考察を深めるべき事例の選定をすすめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
全体として、これまでに調査してきた事例の再考察とともに、その成果を学会発表や論文投稿によって公表していくことに努める。
(1)については、研究計画当初においては兵庫県と東京市の調査結果をふまえ、大正期の学校園について総括し、また収集できた学校園の図像史料を資料集としてまとめる予定であったが、これまでの対象事例の変更などをふまえつつ、京都府と兵庫までに調査してきた事例の再考察とともに、新たな地域についても視野を広げ、新教育実践の様相を検討する予定である。この成果について、所属研究室の紀要などに報告書としてまとめる。
(2)の現代の教育実践については、前年度に引き続き実施調査をすすめつつ、多様な自然体験学習に関する先行事例の整理をおこなう予定である。この成果について、野外教育学会大会などで発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の支出において、人件費・謝金が不必要だったため、使用額に余りが生じた。そのため次年度に繰り越して使用をする。
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次年度使用額の使用計画 |
調査資料の収集や整理などの協力者に対して、人件費として使用する。
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