最終年度は、(1)これまでの調査の整理と、その分析に必要な情報および書籍・資料の収集、(2)今般の「幼児教育無償化」「高等教育無償化」政策の分析し、学会での報告、研究会での報告、そして論文の発表をおこなった。特に(2)については、その意義と問題点を無償性の制度原理との観点で分析することが社会的に喫緊の課題となっていたものであるが、(1)「幼児教育無償化」については、20年近く前の自民党における早期教育(5歳児の義務教育化)の議論を出自としており、近年大きな問題となっている待機児童等の保育問題に対応するものではないこと、(2)「高等教育無償化」については、あくまでも選別的給付(⇔無償性原理としての普遍的給付)にとどまる上、各高等教育機関の経営の国家管理を強化するという、無償化と全く無関係の制度を組み込んだ極めて歪なものであること、(3)総じて、政策形成過程において権利という観点が全く捨象され、権利保障を意図した制度とは言えず、無償性原理とは異なる制度が実体化したものと結論付けた。
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