研究課題/領域番号 |
15K17365
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
照屋 翔大 茨城大学, 教育学研究科, 准教授 (90595737)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 学校認証評価 / 学区認証評価 / 地域認証評価協会 / 学校改善 / 教育委員会事務局 / リーダーシップ / アメリカ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、アメリカにおける「学区を基盤とした学校改善」という学校改善理論とそれを促す評価システムに着目し、学校改善に向けた教育委員会と学校の協働性構築の要件を明らかにすることである。平成28年度は、アメリカにおける認証評価活動を基盤にした学校改善の取り組みに関する二つの異なる団体についての情報収集と、関係者へのインタビュー調査を中心に研究(海外事例調査研究)を実施した。 インタビュー調査は2016年9月にペンシルベニア州フィラデルフィア市(対象:認証評価協会本部)およびセンターバーレー市(対象:サザンリーハイ学区事務局および学校)、コロラド州ウェストミンスター市(対象:学区事務局および学校)にて実施した。ペンシルベニア州ではミドルステイツ協会(Middle States Association Commissions on Elementary and Secondary Schools)の取り組み、コロラド州ではAdvancEDの取り組み、とりわけ通常の公立学校とは異なる教育プログラムおよび在籍児童生徒の特徴を抱える学区・学校を対象にした評価活動の取り組みについて明らかにした。その結果、伝統的な認証評価協会であるミドルステイツ協会が学区を中心とした認証評価へと活動の重点をシフトすることになった経緯と、現在アメリカ全体においては、改善の基点を学校ではなく学区に置くという理論的・実践的動向を確認することができた。 このほかに、本年度は理論的研究として、主にアンディ・ハーグリーブスの文献および翻訳書について検討した。また実践的研究としては、事例学区を3回訪問し、情報交換および情報収集を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、理論研究、事例調査研究、実践的研究から構成されるが、いずれにおいても当初の予定に対して、おおむね良好に進捗していると評価できる。 理論研究においては、前年度はリチャード・エルモア、今年度はアンディ・ハーグリーブスといった、アメリカや欧米諸国において理論的視座を提供してきた論者の所論を収集・検討する中で、本研究のテーマである学校改善における教育委員会(教育行政)の位置づけ、教育委員会と学校の関連性について検討を進めている。 事例調査研究については、前年度は国内調査を、また今年度は前年度に実施することができなかった国外調査も含めて効率的かつ効果的に調査を実施し、テーマにおいて重要なインタビューデータおよび一次資料を収集することができた。とりわけ、今年度実施したアメリカでの調査では、日本の学校経営研究者が長らく着目してきた個別学校単位での学校経営・学校改善(School Based Management:SBM)よりも、地方教育行政を基礎単位にした個別学校と地方教育行政の協働活動として地域教育経営・学校改善(System Approach あるいはDistrict Based School Improvement)を重視する機運が認証評価協会を越えて共有されつつあることを確認できたことが最大の成果であり、今後日本の状況との比較検討を進めていくために、重要な知見を得ることできた。 実践的研究においては、当初の計画通り協力自治体を訪問し、複数回にわたって意見交換を進めてきた。ただし、今年度より勤務校を異動し、自治体との物理的距離が遠くなってしまったので、今後の進め方については、再度先方との協議を要するものと考えている。この点については、早急に予定を調整・確定すべく取り組んでいく。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度はおおよそ当初の予定通り、以下の課題に取り組む。 理論研究:システム・リーダーシップ論の検討を、ケネス・レイスウッドの所論に着目しながら進め、特に個別学校と協働的に学校改善に取り組むうえで地方学区として発揮すべきリーダーシップの要件について明らかにする。 事例調査研究:国内調査研究については、前年度までの計画でまだ訪問できていない自治体を中心に訪問調査を実施する。また、アメリカ調査については、州教育行政当局と認証評価協会が共同的に学校改善に資する学校評価の取り組みとその成果を生かした改善支援を実施している、ノースダコタ州あるいはジョージア州を事例に調査を実施する予定である。ただし、時期や訪問地については治安を含めた国際情勢を踏まえ、総合的に判断する。 実践的研究については、勤務地変更に伴う研究環境の変化を受け、具体的スケジュール等を先方と協議する。その結果を踏まえ、試行に向けた準備を進める。 なお、これまでの各種調査結果については、日本教育経営学会や日本教育行政学会等の全国学会での成果報告、論文投稿を行うべく準備を進める。また、社会貢献活動等を通じて広く研究成果を学校現場や教育行政当局の関係者に還元していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度実施予定であった海外調査を平成27年度未実施分と合わせて、一度の渡航で実施し(ただし、現地での活動時間は予定通り)、効率的に予算執行を進めた結果、10万円程度の繰越金が生じることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
上記繰越金を平成29年度交付分と合わせて、効率的かつ効果的な調査研究の実施に活用する。現時点では国内調査事例の増加、または海外調査の期間延長を通じた事例団体や事例学区の増加を計画している。
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