研究課題/領域番号 |
15K17367
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
河井 亨 立命館大学, 教育開発推進機構, 嘱託講師 (20706626)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大学教育 / 学習 / キャリア形成 / 省察深化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、大学生の学習とキャリア形成の関係性についての理論的・実証的枠組みの構築を図ることである。 1. 2015年度には、大学生の学習として近年着目を集めるアクティブラーニングに関して、「アクティブラーニング型授業における構図の解剖と縫合」(京都大学高等教育研究)をまとめた。今後の調査研究の設計および考察のリソースとしていく。また、大学教育におけるインフォーマル学習の研究レビューとして、教育工学会叢書『インフォーマル学習』所収「大学教育とインフォーマル学習」を公刊した。PBLやインターンシップやサービスラーニングなどのインフォーマル学習の教育実践を類型化しながら把握していくことで、学生の学びと成長の文脈をなす教育実践の性格を弁別していく素地が整えられた。 2. 実践研究として、サービス・ラーニング科目の学生の学びと成長を観察記録からまとめ、授業者の実践原則を明確化した「大学生のリフレクション・プロセスの探究 : サービス・ラーニング科目を事例に」(名古屋高等教育研究)が公刊された。また、早稲田大学で取り組まれている「体験の言語化」プロジェクトに関して、教育目標に即した学生の成長、ルーブリックを用いた評価と学生のキャリア形成全体に関する研究発表(37th Annual EAIR Forum Krems 2015とIAEVG 2015)を行った。立命館大学サービスラーニングセンター科目での学生の学びについても、事前事後で到達目標のルーブリックを用いた評価がどう変化したかを解明する研究発表(IARSLCE 2015)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の課題に関しては、学習とキャリア形成の関係に対して省察を深めていくことが重要な役割を果たすと着目している。 まず、これまでの調査研究によって、実際の授業科目の中での学生の学びと成長に即して省察が重要な役割を果たすことを確認し、成果として研究発表してきた。実際にどのような省察を行うのか、その省察を行う過程でどのようなことを考えるのかといったことを調べる基礎作業を進めている。また、省察の深化について、具体的に一人ひとりの学生の省察を質的に見ていく研究を進めており、次年度以降の研究成果の公表が目指されている。 次に、理論研究として、アクティブラーニング型授業が求められる経緯と背景を解明し、今後の展開を見通す作業を行った。アクティブラーニングでは、書く・話す・発表するなどの活動への関与があること、活動に関与していく中で自分の知識や考えを外化していくことの両軸が柱となる。活動への関与と知識・思考の外化の先で、知識と自分自身とが関連づいていくことが自己変容という意味での成長につながると考えられる。このように、アクティブラーニングと省察深化と成長とを関連づけて考察する準備を整えてきた。現在、これまで理論的知見として参照されることの多かった経験学習理論の理論構築を批判的に検討する作業を進めている。経験学習理論の中にある省察深化の契機をより深いレベルで把握することで、経験を通じて学んでいく過程でどのように省察が深化していくかを解明する理論研究を進めている。以上を踏まえ、本研究課題は、おおむね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
理論研究として、省察の意義をよりいっそう体系的に明確化する研究が必要である。現時点では、経験からの学習の過程で省察の意義を解明する作業が着手されている。その結果を踏まえたならば、次に、経験からの学習が学生の成長(特にキャリア形成)につながる関連性に対する省察の寄与を理論的に明確にする研究が今後の課題となる。そのためにも、キャリア形成についての理論研究もまた必要になる。キャリア形成理論の整理から、キャリア形成にとって、経験からの学習とその中での省察の深化が「どのような意味で」重要になるかを明らかにする研究が必要である。 上記の理論研究に資する調査研究が求められる。どういった契機や要因で学生の省察が深まるのか、どういった省察の深化が学生の成長そしてキャリア形成につながるのかという点を解明する調査を行う必要がある。また、理論研究の成果に立った調査も求められる。キャリア形成と省察深化と経験学習の結びつきが解明されたならば、その結びつきの影響や関連を調べる調査が必要となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度は、より基礎的な文献研究と理論研究とし、その結果を踏まえた大規模調査を計画している。次年度以降に実施予定の大規模調査の額が大きいため、2015年度の使用額を調整した。
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次年度使用額の使用計画 |
現在のところ、2016年度の末に3000人対象の調査を実施し、2017年度の秋に同じく3000人単位の調査を予定している。これらの調査に、2015年度未使用額を使用する計画である。
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