2018年度はシュタイナーの道徳教育における「笑い」の意味と位置づけの整理を試みた。シュタイナーは教師にとって、あるいは教育全般においてユーモアが不可欠であることを強調している。自己解放に基づく「笑い」はシュタイナー教育全体のなかで極めて重要な要素であり、そうした「笑い」は「自由」へと通じてゆくのである。シュタイナーの人間形成論において、自由の獲得は最重要テーマであるが、シュタイナー教育における「笑い」の位置づけを解き明かすことによって、そこでの道徳教育のあり方の本質がみえてくるのである。本課題では、「笑い」の効果を一般的な教育においても取り入れるべく、「笑い」と教育を融合した実践のあり方を模索した。その研究成果については井藤元監修『笑育-「笑い」で育む21世紀型能力』(毎日新聞出版)のうちに結実した。また、シュタイナー学校における道徳教育の実態について、沖縄シュタイナー教育実践研究会、シュタイナーとアート研究会において研究発表を行った。4年間の本研究課題での取組をつうじて、シュタイナー教育における道徳教育の核心部分が浮き彫りになった。本研究課題での成果は道徳教育が教科となった現代の我が国の教育をめぐる現状に対しても多くの示唆を与えるものであるように思われる。とりわけ、沖縄シュタイナー教育実践研究会は、公立学校でのシュタイナー教育の実践を志した研究会であるが、シュタイナー教育を「閉じた」コミュニティーにおける特殊な実践とみなすのではなく、そのエッセンスを吸収しながら、一般的な公教育の中で取り入れてゆく試みに本研究は寄与しうると考えている。本研究課題の成果は、改めて著書としてまとめる予定である。
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