教員年齢構成の急激な変化や自律的学校経営のさらなる進展などを背景とし、学校改善に関する「知識」の継承・発展(知識移転)は喫緊の課題となっているが、その実際は明らかになっていない。そこで今年度は「学校組織における知識移転」の仮説生成を行うべく、二つの事例(小学校・高等学校)に関する調査研究を行った。具体的には、調査協力者である二名の教員のライフヒストリーを作成するとともに、その関係者へのインタビューも併せて行い、知識移転の様相について多角的視点から検討した。 調査の結果、教師が新たな実践、学校改善を展開するうえでは、それまでの教職経験で獲得した「知識」が強く影響していることが確認された。また学校改善を果たすうえでは、当該教師(ミドルリーダー)が獲得した「知識」を、勤務校や時代状況に合わせ修正・発展させ適用させる様子も示された。さらに、「知識」の継承・発展は、当該知識を産み出した教師だけでなく、周囲の教師へも影響を与え、拡散する可能性も示唆された。このメカニズムを明らかにすることができれば、教師の異動と学校改善、そして人材育成を含めたトータルな支援方策を探ることが可能である。 ただし、上記可能性を示すためには、知見の一般化が必要である。今年度調査を行った2事例を比較検討し、そこに共通する知識移転のメカニズムを描き出す必要がある(仮説の生成)。また生成した仮説を視座として、その他事例を収集・分析することで、より多くの知識移転事例を説明できるモデル生成を行う必要もある。
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