本研究は、イギリス連合王国(UK)において国内外の多種多様な資格の比較を可能にする資格ポイント換算システム(UCAS Tariff)に焦点を当て、制度運用の実態と、それを入学者選抜のために利用・参照する(またはしない)大学の入学資格要件及び選抜基準の多様なパターンを生み出す要因を明らかにすることを目的とする。なお、本研究が調査対象とするのは、イングランド、ウェールズ、スコットランドの大学とする。 平成29年度は、12月にイングランドの大学、3月にウェールズとイングランドの大学を訪問し、アドミッション・オフィサーに対して、①大学の背景、②アドミッションに関する組織体制(ガバナンス)、③入学資格要件及び選抜基準、④UCAS Tariff/資格枠組み、⑤進学移動などの項目についてインタビューを行った。以上の現地調査で得られたデータを前年度までの調査データと合わせて分析した結果、次の点が明らかとなった。 大学の入学資格要件及び選抜基準のパターンについては、高等教育セクターの競争的環境(①イングランドの大学の授業料値上げ、②入学定員の制限の撤廃、③学生数に応じた補助金の配分と全体の配分額の削減、④大学ランキングの順位、⑤アドミッション・オフィスの業務の中央集約化など)、大学の歴史的・学術的背景や選抜性(多様な資格及び資格換算ポイント(UCAS Tariff points)を入学資格要件とするリクルーティング大学とゴールド・スタンダードであるGCE-Aレベルなどのアカデミック資格を重視する選抜・研究大学)などの要因が存在することが明らかとなった。また、中等教育修了者の進学移動(連合王国内の他の地域へのクロス・ボーダー)に影響を与える要因として、大学の所在地に関する地理的要因、大学進学年齢の違いなどの制度的要因、授業料や大学進学者への補助金に関する財政的要因などが存在することがわかった。
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