研究課題/領域番号 |
15K17382
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
荻巣 崇世 名古屋大学, 国際開発研究科, 特任助教 (00743775)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 授業研究 / 教育借用 / 教育の国際化 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、①授業研究に関わる日本語及び英語の収集とカテゴリー化、②マッピング、③聞き取り調査の準備をおこなった。①文献の収集とカテゴリー化では、リサーチアシスタントを雇用し、手分けして約500の論文、書籍、雑誌記事等の収集と分析に当たった。文献収集に時間を要したため今年度中にすべての分析を終えることは叶わなかったが、カテゴリー化を進めながら同時進行で②マッピングを行い、大まかな傾向をつかむことができた。③については、東京大学と大阪大学へ授業研究の第一人者を訪ねてアドバイスをもらったほか、6月に宇都宮大学で開催された日本比較教育学会、11月にタイ・コンケンで開催された世界授業研究会(World Association of Lesson Study)、1月上旬に静岡県伊東市で開催された「学びの共同体」研究会、1月末にフィリピン・マニラで開催されたアジア比較教育学会(Comparative Education Society of Asia)に参加して、①の文献の分析の中で重要と認められた世界の研究者や実践家とコンタクトをとり、聞き取り調査への参加を打診した。その結果、日本、フィリピン、カンボジア、タイ、インドネシア、米国の6カ国から17名より快諾を得た(調査は28年度に実施予定、対象者は目標30名)。また、①と②の結果を踏まえて、聞き取り調査の質問項目の作成にも着手し、共通で質問するべき項目のドラフトを作成することができた。 上記の成果の一部は、④国内学会にて発表した。上述した第51回日本比較教育学会では、①と②から得られた予備的考察を「授業研究の国際的な伝播と循環のポリティクス:言説分析を中心に」と題して口頭発表を行い、参加者から有益な質問やコメントを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である平成27年度に実施予定であった①授業研究に関わる日本語及び英語の収集とカテゴリー化、②マッピング、③聞き取り調査の準備、④国際学会での発表について、 ①、④については多少の遅れが見られるが、②、③については順調に進展している。 ①文献の収集は、文献リストを作成した時点以降に新しくかつ重要と思われる文献が複数出版されたこと、また、紀要論文が多く文献の収集に予想以上に時間を要する結果となり、予定していた12月までにすべての文献を収集し分析するまでに至らなかった。ただし、年度末までに文献の収集は終了している。②マッピングは、当初の予定を変更し①と同時進行でマッピングを行うようにしたことで、カテゴリー化の結果をすぐにマッピングで可視化することができ、研究の早い段階で大まかな傾向を掴むことができた。③聞き取り調査の準備については、東京大学と大阪大学へ授業研究の第一人者を訪ねてアドバイスをもらったほか、国内外で開催された学会等に積極的に参加して世界の研究者や実践家とコンタクトをとり、聞き取り調査への参加を打診した。その結果、日本、フィリピン、カンボジア、タイ、インドネシア、米国の6カ国から17名より快諾を得た(調査は28年度に実施予定、対象者は目標30名)。また、①と②の結果を踏まえて、聞き取り調査の質問項目の作成にも着手し、共通で質問するべき項目のドラフトを作成することができた。 ④学会発表については、6月の日本比較教育学会での発表のほかは発表ができておらず、当初の計画から若干の遅れが生じた。これらは、11月に開催された世界授業研究会(WALS)は、前年度末で発表申込みが終了しており発表の機会を逸したのに加えて、3月にカナダで開催された北米比較教育学会(CIES)は、同時期に本務での出張が重なり、発表することが叶わなかったことによる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の前半は27年度に収集が終了した文献の分析を進めてマッピングを完了させる。後半からは(1)聞き取り調査を実施し、(2)文献のマッピングの結果と聞き取りの結果を擦り合わせて理論の構築と精緻化を目指すとともに、(3)成果を発表していく。 (1)聞き取り調査の実施 聞き取り調査は、文献には表れない「貸し手」「借り手」の動機や教育借用の背景・経緯を明らかにし、マッピングで得られたマクロの理解を補完する目的で行う。平成28年度以降は、まず初年度に作成した事例調査の枠組みに従って、授業研究の貸出・借用の事例についての予備調査を実施する。予備調査では、授業研究の実践について国際比較調査を実施している鳴門教育大学の関係者への聞き取り調査を実施する。次に、予備調査のデータをもとに質問項目を改訂し、国内外での本調査を実施する。調査対象は現在参加を承諾いただいている日本、フィリピン、カンボジア、タイ、インドネシア、米国の6カ国から17名を含む合計30名程度への聞き取り調査を予定している。 (2)教育借用モデルの構築・精緻化 マッピングから導かれた試行モデルを事例によって検証し精緻化を図る。日本と外国両方の授業研究に長年関わっている専門家の知見が不可欠であるので、国際的な権威である佐藤学教授(学習院大学)や秋田喜代美教授(東京大学)にご協力頂いてモデルの妥当性を向上させる。 (3)研究成果の発表 本研究の成果は日本教育方法学会、日本比較教育学会、及びWALS、CIES、米国教育学会(AERA)等で発表して研究方法やデータの解釈などについて検討する。特にCIESでは、教育借用研究をしている若手研究者を中心にラウンドテーブルを開催し、授業研究以外の教育借用の事例に対して、本研究で構築した理論がどの程度妥当であるかについても検討する。最終的には研究内容を学術論文の形でまとめ、成果を問う。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度は、特に各大学の紀要に収録された文献の収集に時間を要し、書籍の購入を計画通りに進めることができなかった(物品費)。同様の理由から、文献の分析を依頼する予定であったリサーチ・アシスタントの雇用が滞った(人件費)。また、3月に参加を予定していた北米比較教育学会(CIES)(カナダ・トロント市で開催)は、本務の都合で参加が叶わなかったため、予算とのズレが生じた(旅費)。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度から引き続きリサーチ・アシスタントを雇用して、前期に英語文献の収集と分析を実施する。また、参加を予定している世界授業研究会(WALS)及び北米比較教育学会(CIES)の旅費・参加費として使用する予定である。
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